浅井育郎
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特別研究テーマ
>湯田ダム人工湖における湛水地域の植生
1 はじめに |
ダムによって作られた人工湖は天然湖と違い水位変動を伴うものが多い。特に、制限水位方式で運用されているダムでは、一定期間、ダム湖内に露出面(湛水地域)が広がり、特異的な植生が発達している。そこで、本研究では湛水地域の植生を調査し、出現する植物の特性と生育期間の関係を検討した。 |
2 調査地の概要と調査方法 |
岩手県湯田町にある湯田ダムは1953年に竣工し、年間を通して常時満水位236.5mと制限水位222mの間で運用されている。水位変動は4月に最高位となり、でそれ以降は低下し、10月から再び上昇する。 調査は2004年8月から11月までの計12回にわたり、錦秋湖の湛水地域を踏査し、植物相や植生を把握した。植生調査は、地形の異なる3ヵ所に帯状区(1:332m、2:76m、3:36m)を設置し、各区ごとに2×2mの枠を連続に置き、出現する植物の種名と優占度を記録した。さらに各帯状区において高低差測量を行い、横断面図を作成した。また、ダム管理事務所から水位変動のデータを借用し、海抜高度から露出日数を推定した。 |
3 調査結果 |
植生調査の結果、帯状区1では40種出現し、そのうち6種が帰化種であった。同様に帯状区2では、24種、6種。帯状区3では、33種、7種であった。いずれも、出現種数では在来種が多いが、出現頻度は外来種の方が高かった。特にイタチハギは全枠の27%に出現し、帯状区3ではイタチハギ低木林が連続的にみられた。全ての帯状区で共通して、海抜高度が高い場所ほど多年草や低木の出現率が高く、水際に近い海抜高度が低い場所ほど一年草の出現率が高かった。なお、水際から最も離れた場所ではダム周囲に見られる森林が発達していた。 |
4 考察 |
調査結果から、海抜高度に応じて生育可能な植物が限定されていることがわかる。水位変動と海抜高度から露出日数を計算した結果、つぎのことがいえる。生育可能な日数が植物の出現や生育に影響を与えているといえる。 生育可能日数が63日以下の場所では植物は生育できず、64日から73日の場所では一年草のみ、74日以上の場所では多年草や木本も出現する。 他方、オオオナモミ、オオブタクサなどの帰化種は水位変動がいちじるしい地域で頻度が高く出現する。生育可能日数が短い地域では在来種の一年草アキメヒシバ、イヌタデなどが主体となっている。これらの植物は路傍や荒地、耕作地周辺の獲乱を受けやすい湿地に生育する特徴を採り、湛水地域も成育することが可能と考える。 |
5 おわりに |
人工湖の湛水地域は植物の生育にとっても生育可能な期間が短い厳しい環境にあり、限定された植物しか生育できないことが示唆された。 |