人文社会科学部研究室探訪●Part10(vol.1)page1

教授 笹尾 俊明001
教授 笹尾 俊明002
教授 笹尾 俊明003

Profile
SASAO Toshiaki
大阪市立大学経済学部(1996年)、神戸大学大学院経済学研究科【修士】(1998年)、同博士後期課程中退(2000年)、神戸大学【博士(経済学)】(2004年)


学部改組により、今年4月に新しくできた地域政策課程の特長について教えてください


地域の問題を総合的な視点で考え、グローバルな課題も解決できる人材を目指しましょう。

 一つのキーワードとして「地域課題」を扱うということが挙げられます。震災復興、少子高齢化など地域のさまざまな問題を人文社会科学の視点で捉え、そうした課題に対応していける人材を育てていくことが目標の一つです。ただ「地域」といっても、狭い範囲に限定し物事を考えるわけではありません。地元の問題は、グローバルな問題へとつながっていることが多くあります。例えば私の研究分野である環境問題でいえば、地球規模の温暖化も発生源は各地域にあり、岩手県もその例外ではないわけです。震災以降注目されている地域分散型エネルギーのシステムづくりなど、地域の問題を解決することで、全体の問題を解決することにもつながってくるといえるでしょう。
 それからもう一つのキーワードは「総合化」。これは改組前から引き継いできた考え方で、一つの課題を解決するには、複数の視点からさまざまなアプローチをしていくことが必要だということです。環境問題の解決策を学生に尋ねると、「法律をつくって規制すればいい」というような意見がよく返ってきます。確かにそれは間違いではないのですが、例えばゴミの排出を抑制したい場合に、法律という強制力を用いて排出を抑制するという手段は、この自由社会においてなかなか受け入れられることではありません。そこで、禁止にするのではなくゴミの排出量に応じ経済的な負担をさせるといった手段を提案することで、ゴミの排出量を減らす動機付け「インセンティブ」を与えることができます。環境保全のことばかりを考えるのではなく、経済的な視点も取り入れることで、期待した結果を出すことができることがあります。そういった意味でも、多角的な視点からアプローチする「総合化」の視点は重要だといえるでしょう。

環境経済論の魅力はどういったところにあるのでしょう


環境経済論は環境保全と経済発展のバランスを考え、その仕組みづくりを提案する学問です。

 環境経済論とは、簡単にいうと環境保全をしながら経済発展をするにはどうしていったらいいのかを考える、ちょっとよくばりな学問です。これまで環境と経済は、どちらか一方を優先すれば他方が犠牲になるというトレードオフの関係にあると捉えられてきました。しかし、持続可能な社会をいかにつくっていくかが課題とされる現在社会において、環境保全は当然重要なのですが経済的な発展も考えていかなければなりません。いかにうまくバランスをとっていくか、そのためのシステムづくりを研究することが大事です。従来、環境問題の改善のためには一人一人の心がけが重要だという意識啓発型の考えが主流でしたが、それだけでは状況が改善しません。そうした中、先述したような経済的な視点で政策を考えることの有効性が少しずつ認知されるようになってきました。例えばゴミ処理の有料化という手法は全国の半数以上の自治体で導入され、実際ゴミの減量等に一定の効果を上げています。そうしたインセンティブをいかにうまく組み込んでいくか、より効果を上げるにはどうしたら良いかを考えるところも楽しいところですね。
 私の授業では、環境問題がどういったメカニズムで生まれてきたのかということや、環境問題と経済との関わりについて講義し、その上で問題を解決するためにどのようなインセンティブ、仕掛けをつくっていったら良いのかを考えていきます。

講義で心掛けていることはありますか

 退屈せずに受けることができる、分かりやすい講義を目指しています。授業で配るプリントは穴埋め式にし、キーワード等をブランクにすることで、学生たちがそれを書き込んで完成させるようにしています。図や写真も多用し、視覚的にも頭に入りやすいよう工夫しています。また、授業中1~2回はその日の講義に関係する「お題」を出し、学生同士で話し合う時間を設けています。それにより、ただ普通に授業を進めるよりも学生たちが積極的に発言してくれるようになりました。気軽に話し合うことで考えが整理され、自分の意見を持つことができるようです。この方法は講義についての意見や感想を書くレスポンスカードでも評判が良いので、学生たちの役にも立っているのかなと思います。

先生の講義を通し、学生たちにはどういった力を身に付けてほしいですか


環境と経済の問題は決して他人事ではありません。客観的な観点を大事にし、能動的に学習してください。

 期待としては、環境と経済の勉強を通じ物事全体を冷静かつ客観的にとらえることができるようになってほしいと思います。環境政策についての議論でも、例えば市民や消費者団体と企業それぞれに利害があり、両者で意見が対立し、結局話があまり進まないというような場合があります。そういった争いになるようなテーマについても感情的にならず、ある程度客観的な視点で意見を出せるような人材を育てていければと考えています。
 併せて学生サイドも能動的に学習に取り組み、自分の頭で考えることを意識してほしいですね。現在は分からないことがあってもすぐにネットで調べ答えが出る時代ですが、それだけでなく新聞やテレビなど幅広い情報源にあたり、物事を判断することが大切です。社会に対する関心をもっと高め、できるだけ多くの情報を精査するようにしてほしいです。政策や経済の話は学生たちにとって距離感があり、自分たちにはあまり関係ないと思われがちなのですが、買い物やゴミ出しなど、普段の生活にも関わりのある学問ですので、他人事ではないということを知ってもらいたいです。
 進路としては、一般企業に就職した場合でも公務員でも環境に携わる部署に配属になることもありますし、それ以外の部門に就いたとしても、広い意味で環境と関係のない事業所はありませんので、ここで学んだことをあらゆる場面で活かしてほしいと思います。