人文社会科学部研究室探訪●Part10(vol.1)page2

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教授 笹尾 俊明002
教授 笹尾 俊明003

Profile
SASAO Toshiaki
大阪市立大学経済学部(1996年)、神戸大学大学院経済学研究科【修士】(1998年)、同博士後期課程中退(2000年)、神戸大学【博士(経済学)】(2004年)


先生の研究についてお伺いしたいです


大学の卒論でリサイクルをテーマにしました。ドイツ・フランスと日本のリサイクルシステムを比較したことが研究の始まりです。



主に廃棄物に関することを取り扱っています。環境と経済両方にとってベストな答えを探っていければ。

 環境問題の中でも、特に廃棄物問題を専門にしています。先述のゴミ処理の有料化以外にも、岩手県を含め半数以上の都道府県が産業廃棄物の排出抑制・リサイクルを目的に産業廃棄物税というのを導入していますが、果たしてそれでどれだけの廃棄物減量効果・リサイクル促進効果があるのかなどについて、自治体の関連データを集計して実証分析をしながら研究してきました。
 またゴミ処理施設を巡る社会的な問題についても研究しています。ゴミを適正に処理するために皆、施設が必要だということは分かっていても、いざ自宅の近くに建設するとなると反対意見が多くなります。「Not In My BackYard(NIMBY:ニンビー)」というのですが、この問題を解決するため、反対する人々は施設の何が嫌なのか、水源が汚染されるのが心配なのか、収集運搬車の増加が受け入れられないのか、どの程度離れていれば許容できるのかなど、一般市民にアンケートをとりながら明らかにし、経済学的な視点から定量的に分析することで、少しでも地域に受け入れられる施設をつくるには具体的にどういった部分を工夫していったらいいのか、情報提供や住民参加のあり方などを含めて探っています。

今後の展望についてはどうでしょう

 これまでリサイクルの取り組みは多くの国で積極的に行われてきており、日本でも進められてきたわけですが、一般家庭から出るゴミのリサイクル率を見るとここ数年はほぼ20%で停滞しています。確かに以前は10%を切っていたので、増加してはいるのですが最近は頭打ち状態です。環境と経済のバランスという点で見て、それが果たして最適な数値であるかは慎重に考えなければなりません。
 地球温暖化のような問題の場合、国際的な会議の場で地球全体としていつまでにどのくらい温室効果ガスを減らしていくかという議論がされていて、一定の合意があります。一方で「リユース」「リデュース」「リサイクル」の3Rをどこまで進めるのかという合意はないんですよね。国や自治体の目標といったものは一応あるのですが、それが科学的な検討を踏まえたものとまでは言えず、今までこれだけ減らして来たからさらにもう少し減らしましょうというレベルです。もちろん廃棄物の量が少なければ少ないほど資源の無駄遣いが減るので望ましいことではあるのですが、それじゃあリサイクル率が100%ならいいのかというと、それも経済的な負担が重くなるので闇雲に推進するわけにはいきません。ですので、そもそも国内のリサイクル率を今以上に高めなければならないのかというところから議論をする必要があります。
 リサイクルするのにもエネルギーがかかりますし、二酸化炭素が出るので環境負荷にもつながります。リサイクルはあくまで廃棄物を減らすための手段であって目的ではありませんので、他の環境影響まで考えて結論を出さなければなりません。環境経済学では、そういった点も含め、リサイクルによって得られる追加的な便益がリサイクルするのにかかる追加的なコストと同じになるところまでリサイクルすべきと考えます。それが何%なのかという新しい研究も最近出てきているのですが、私はそれをもう少し日本の実情に合わせた実践的な観点から考え、3Rの推進基準を決めていければと。
 それから、東日本大震災以降はエネルギーが注目されておりますので、その分野にも少し足を踏み入れていきたいですね。そこでもやはり私がテーマとするのは、廃棄物に関することです。現在、日本でも廃棄物の熱利用は行われているのですが、海外と比べると規模が小さく、まだまだ発展の余地があります。日本では一般廃棄物の約8割を燃やしているのですが、発電・熱利用というと、せいぜい温水プールにするくらいです。発生する熱やエネルギーを充分有効利用できていないという現状がありますので、それを経済的観点から調査・分析したいと考えています。

これから岩手大学で環境経済論を学びたいという高校生の方にメッセージをお願いします


他大学との合同ゼミでは、学生同士、切磋琢磨しながら自分たちの研究を深めていってほしいです。

 「環境経済」という言葉から、難しそうだというイメージを持っている方も多いのですが、この学問は私たちの生活と深く関わっているものです。身近で、親しみのある学問ですので、ぜひ皆さん気後れせず積極的に学んでいってください。
 それから、「経済学」というとお金儲けのための学問だと思っている方もおり、それも一面では間違いではないのですが、もともと「経済」は「世を経(おさ)め、民を済(すく)う」という四字熟語を略した言葉で、本来の目的は社会を豊かにしていくことです。そこに環境が入る「環境経済学」は、環境と社会をいかに豊かにしていくかという学問だといえます。経済という概念をあまり狭くとらえず、環境と社会の両方のためになる有効な制度設計を提案するものであるため、幅広く学ぶことができるという意味でも魅力的な科目です。特に社会問題に広く関心のある方には最適だと思いますよ。
 また、私のゼミでは他大学で環境経済学を学ぶゼミと「合同ゼミ」を毎年行っています。教員が細かく指導することで効果がある場合もありますが、学生同士、他学生の研究に触れることで向上心も生まれると思いますし、自分たちで実際にアンケートやヒアリング調査等を行いますので実践的な力がつきます。ネットや教科書で調べた情報だけでなく、自分たちで手に入れた情報を使い研究することで、面白さはもちろん、オリジナリティにもつながっていきます。私も適宜ヒントを与えながら学生たちのサポートをしていきますので、興味のある方にはぜひ参加してほしいです。



<学生のコメント>

○東日本大震災で地元が被災し、これから経済復興していかなければならないという状況の中、自分も何か貢献したいという気持ちが芽生えました。そのときに出会ったのが環境と経済が結びついたこの学問です。放射性廃棄物の処理問題一つをとっても環境と経済が深く関わってきますので、両立するような方法を考えてみたいと思い岩手大学の環境経済論を専門に選びました。この分野は、環境を経済という合理的な面から考え、多くの人へいかに理解・共感してもらえる説明をするかが重要になってきます。
 私は今、合同ゼミに参加し研究発表へ向け取り組んでいるところです。学内でアンケート調査を行い、化粧品容器回収の実態について研究しています。今後環境経済論はますます重要視されていく学問で、食糧廃棄やエネルギーの問題など、さまざまな課題を解決するのに役立つものです。進路についてはまだ検討中ではあるのですが、将来はここで学んだことを生かし幅広い分野で活躍していければと思っています。

○環境問題は経済的な発展に伴い生まれてきます。一方を優先すると、もう一方を犠牲にしてしまうという「トレードオフ」の関係性に興味を持ち、勉強してみようと思いました。笹尾先生の授業は1回1回が丁寧で、穴埋め式のレジュメなど工夫も多く、考えを深められる内容で非常にためになります。この学習をしていく中で実感するのは、やはりバランスが大切だということです。ほかの分野では、初めから環境を保全するためにはどうするかという観点で進めるのですが、ここでは両方バランスよく考えていかなければならないため、総合的な視点を意識しながら研究を行っています。
 合同ゼミでは、地元の企業にヒアリング調査を行い、空き瓶リユース・リサイクル状況について調べています。大手企業ではリユースが推進されていますが、地元の企業ではリサイクルが主流です。主な処理方法がリサイクルに変わり、実際にコストや環境負荷はどう変化したのかを明らかにしていきたいなと思っています。国民の環境に対する意識を調査し、将来的にはメディア関係の職業に就き環境関係の情報を広く発信できればと考えているところです。報道関係以外でも、企業の環境担当に就くなどし、ここで培った力を発揮できればと思っています。