人文社会科学部研究室探訪●Part10(vol.3)page1

教授 本村 健太01
教授 本村 健太02
教授 本村 健太03

Profile
MOTOMURA Kenta
筑波大学芸術学研究科芸術教育学【博士】(1996年)


岩手大学の芸術文化専修プログラムについて、その特長を教えてください


岩手を中心に活躍できる人材を育成し、地方の芸術文化発展に貢献していきます。

 岩手大学にはかつて「特美」と呼ばれた特設美術科があり、教育・芸術・デザインなどさまざまな分野で活躍する優れた人材を多く輩出してきました。2000年度に特設美術科は芸術文化課程造形コースとなり、2016年度からは教員養成特化のための教育学部と、芸術文化を多角的・総合的に学ぶための人文社会科学部とに分かれました。歴史の中で名称や体制は変化しながらも、地域の芸術文化向上に寄与する人材を養成するという目的を現在も引き継いでいます。
 人文社会科学部人間文化課程の芸術文化専修プログラムには、絵画・版画・彫刻・書・映像メディア等の造形表現領域、プロダクトデザイン・グラフィックデザイン等のデザイン領域、金工・窯芸・染織等の工芸領域、美学・美術史・美術理論等の芸術学領域の4領域が用意されており、各専門領域で研究活動を行うことができます。改組に伴い、これまでのジャンルに加え書道や音楽の理論分野も入ることになり、より幅広く学ぶことができるようになりました。
 入学試験については、これまで通り実技力を重視した推薦入試がありますが、一般入試からの入学者も専修プログラムを選択できるため、実技が全くできなくても芸術に興味がある方は、主専修あるいは副専修として学修することができます。実技以外の授業も充実しており、学芸員の資格も取得可能です。

先生の研究室で、学生たちはどういったことを学んでいるんですか


地域課題解決プログラムは、岩手大学の学生が地域から寄せられた課題の解決に挑戦していくというものです。興味のあるテーマがあれば積極的に参加しましょう。

 私が担当している視覚文化(ビジュアル・カルチャー)研究室では、デザインやアート、そしてサブカルチャーの制作研究ができます。映像・アニメーション、Webデザイン、手描きのイラストレーション、漫画・絵本、グラフィック・広告デザイン、メディアアート、ゲーム、フィギュアなど幅広い領域を扱っており、立体物に興味がある学生は粘土等を用いフィギュアを制作し、漫画が好きな学生は実際に自分で物語をかたちにするなど、各自が自分の興味・関心を掘り下げています。ただ好きで作品をつくるだけなら趣味で終わってしまうのですが、研究室では「地域課題解決プログラム」の一環として、学外の人と連携し地域のために役立つコンテンツづくりを考えていく取り組みを行っています。個人制作にとどめず、地域のためのプロジェクトを進めていくことで将来的に制作系の現場で活躍できる人材を育てたいという思いです。
 学生が進める取り組みの事例としては、久慈市の縫製業による「ナチュラルロリータ(ナチュロリ)」系ブランドを演出する映像制作を行ったり、岩手のスキー場をPRするために『雪原戦隊アスタリスク』という漫画を描いたりというものがあります。平成28年度現在では二つの課題に取り組んでおり、オリジナルの「萌えキャラ」を描いて遠野市をアピールする「遠野萌えキャラプロジェクト」を企画し、SNSやノベルゲームで情報発信したり、道の駅などの施設で商品展開を考えてもらったりする活動、そしてもう一つは、岩手県と超人スポーツ協会による「岩手発超人スポーツプロジェクト」に参加し、岩手をテーマにテクノロジーを使った新たなスポーツ競技を開発するという活動です。この超人スポーツ開発の取り組みでは、「岩手」や「三ツ石神社」から発想し、その世界観を別途漫画でも制作した「ロックハンドバトル」の学生チームが「いわて若者文化祭」でのコンテストで最高賞を受賞し、超人スポーツ協会の正式種目に採用されました。地域に根ざした「ご当地超人スポーツ」をつくることで岩手の地域振興につながりますし、テクノロジーを活用したスポーツは年齢・障がいの有無などにかかわらず誰もが楽しめるものであるという意味でも意義があります。
 また、JRの観光による地域活性化策「いわてデスティネーションキャンペーン」が東日本大震災の翌年に開催されましたが、このキャンペーンポスター制作に際し、ジェイアール東日本企画や地元のコンテンツ制作の方々とともに研究室学生が企画から参加し、「第61回日本観光ポスターコンクール」で国土交通大臣賞という成果を得ました。こうした成功体験は学生の自信を育み、就職活動の際にも堂々と自己アピールをすることができると思います。将来デザイナー等になり活躍することを考えると、こういった学生時代の経験が生きてくるのではないでしょうか。

授業ではどういったことを教えているのでしょう


実際に漫画家としてデビューしている学生もいます。当研究室では幅広いジャンルを取り扱っているので、その中で自分に合ったものを見つけてください。

 今日のデザインに至るまでの歴史をたどる「デザイン論」や、デザインの基本を学ぶ「デザイン基礎A」があります。私自身が進める研究のバックグラウンドとして基礎造形学がありまして、その内容も話しながら授業を行っています。これは音楽に楽譜等の理論があるように、造形にも文法のようなものがあるのではないかというところから出発し、造形の可能性を探っていくというものです。私がこれまでやってきたもののなかには、花など自然を写した写真を編集しパターンをつくったり、線をプログラミングで3D展開しその一瞬を記録したり、三角形をランダムに200個ほど集めて並べたりといったこともあります。手描きでは難しいことをプログラミングでやってみようという試みです。こうしたベーシックデザインは、絵画やアニメーションなどさまざまな芸術分野に応用することができます。
 より専門的な実習や演習の授業では、造形の基礎をもとにロゴデザイン、3Dのオリジナルキャラクター制作、インタラクティブな設定のアニメーション制作、Webデザイン、映像制作などを行っています。2年生までは基礎を満遍なく学び、3年生になるとそれぞれの方向性を固め、個人の作品を制作するとともに研究室プロジェクトに参加するなど専門領域での経験を積んでいくという流れです。

指導にあたり気を付けていることをお伺いしたいです

 前に出すぎないこと。それから教えすぎないことですね。学生たちが自分自身の力で企画しプロジェクトを組むことが経験として大事だと思っています。教員が介入してしまうと、その指示の通りに動いてしまい自主的に行動できません。そのため、基本的には地域のために何ができるかを学生たちに考えてもらい行動させるようにしています。ただ学生だけだと手を広げすぎてしまうこともありますので、あまりにも壮大な課題になりすぎないよう、必要に応じブレーキをかけることが必要です。テーマから大幅にそれないよう舵取りをするのが教員の役割だと思います。
 技術的な指導に関しては、例えばソフトの取り扱いでもインストラクターのように詳しく説明はしません。アドバイスはしますが、自己教育力を高めるようまずは本人にやらせてみるという姿勢です。自分で自分を高めていくことが大切だと考えます。