人文社会科学部研究室探訪●Part11(vol.1)page1

教授 松林 城弘001
教授 松林 城弘002
教授 松林 城弘003

Profile
MATSUBAYASHI Kunihiro
同志社大学文学部英文学科【学士】、兵庫教育大学大学院学校教育研究科教科領域教育専攻言語(英語)コース【修士】


岩手大学で欧米言語文化を学ぶ魅力について教えてください


富士山のように、多様なジャンルの基礎知識を身に付けることで広く裾野を広げた上で、自分が選んだテーマで高い山を築いてください。

 当大学の人文社会科学部が掲げる理念は「総合化」と「専門深化」です。富士山を例に考えると分かりやすいのですが、富士山は裾野に雨水や緑、鉱物を溜め込んで広がり、その上に高い山が立っています。その裾野部分が学習における「総合化」に当たり、1年生のうちは人間科学、芸術、スポーツ、現代文化など人間文化課程にある9つのプログラムを通して広い知識を身に付けていき、2年生になるとその基礎をさらに深く学ぶことでその裾野を広げていくという形です。3年生以降になってから、それまで広げてきた裾野の上に「専門深化」の山を築いていきます。裾野部分が広くなければ、山も高くなりません。ですので、自分のやりたい研究を深いところまで進めるには、2年生までにいかに幅広く基礎的な学習をするかにかかってきます。当大学の人文社会科学部は必修単位が125単位、そのうち教養科目が43単位もあり、興味さえあればどんどんその知識を広げられる環境が用意されておりますので、ぜひ意欲的に勉学に励んでほしいと思います。
 英語を専攻する学生は、4年生になると卒論の中間発表として英語で自分の研究をプレゼンすることになります。1人20分の持ち時間で、正確な文法や抑揚等メリハリの付け方なども考えなければなりませんので、けっこうな英語力が必要です。最終的には、自分の研究を深められるのはもちろん、それを英語で的確に表現し他者へ伝えることができる人材に育てます。

先生は言語学の授業を担当されているそうですね


言語の習得や教育について考えるためには、脳科学や社会学など、ほかの領域にも入っていく必要があります。選択肢が多いのも魅力の一つです。

 私の主な専門は言語習得論と言語教育学習論の2つです。母語と外国語に関する知識・性質の違い等を明らかにしながら、人がどのように言語を習得するのか、どういう段階を経て言語を身に付けていくのかなどを考える授業を行います。具体的に内容を挙げると、動物と人とのコミュニケーションの差異、育った環境による言葉遣いの違い、脳の発達と言語習得の関係などです。
 脳との関わりについては、例えば私たち日本人は義務教育で6年以上英語を学んできているのに、あまり身に付いていないということがよく問題になりますが、それは何故かということを考えたときに、一つの仮説として「言語臨界期」というものがあります。これは、12歳くらいまでは左脳・右脳両方を使って言葉を処理していたのが、思春期を過ぎたころにその役割が左脳に移ってしまうため、12歳前後を境に言語の習得が難しくなるという仮説です。この立場からすると、中学生から英語の学習を始める教育制度は効果が出ないということになります。最近学習指導要領が変わり、小学校から外国語学習をスタートするということになりましたが、その背景には「言語臨界期仮説」があるというわけです。このように、言語習得論は脳との関わりという意味では科学の視点が必要になってきますし、環境からの影響という部分では社会学的な勉強も大事ですので、多様な分野の中から研究テーマを選ぶことができる魅力的な学問だと思います。卒論の題材もさまざまで面白いですよ。

講講義で気を付けていることはありますか


時には映像等も使いながら、具体的な事例を出して説明します。実例を紹介しながら学生たちに問いかけることによって、さまざまな意見を引き出していければ。

 配布するプリントは、学生たちが自分の言葉で完成させられるよう穴埋め形式にし、授業の内容も能動的に自分の頭で考えられるようにということを念頭に置いています。例えば言語学習観の変遷について簡単に説明すると、かつてはひたすらドリル等をこなしながら覚える学習法が推奨されていたのですが、現代は他者と会話をすることで言語を覚えるという教授法が主流です。実際に学生同士英語で会話をしてもらうことで、その効果を実感してもらうということをしています。
 それから、実例を出して問いかけることもよく私がしていることで、先ほど話した「言語臨界期仮説」の授業では、ジーニーの例を紹介しさまざまな意見を出してもらいます。ジーニーは、1970年代カリフォルニアに生まれた子どもで、12歳で救出されるまで虐待によって外の世界との交流がなく、意思疎通能力が発達しませんでした。果たしてこれは「臨界期仮説」を証明するものなのかどうか、学生たちに疑問を投げかけ考えてもらいます。年齢による言語習得能力の問題ではなく、虐待という特殊な環境が言語の習得に影響を及ぼしたのではないかと考えることも可能です。あるいはもっとほかの原因があるかもしれません。さまざまな意見を出してほしいと思っています。

先生の授業をとった卒業生の進路は、やはり英語に関係するものが多いのでしょうか


英語教師やCAなど、英語を生かせる仕事に就いている学生も多くいます。私自身、中学・高校などの教師経験がありますので、教育関係のアドバイスもしていきたいです。

 私は英語科教育論も受け持っておりまして、この授業を受けると教職免許を取得することができるということもあり、中学校・高校の英語教師になる学生が多いですね。公務員もおりますし、英語を生かしたいということで、航空会社、ホテル関係、旅行業界などに就職する方もいます。
 当ゼミの前期ではそれぞれが興味のある文献を読んで知識を広げ、後期ではそれを発表しますので、言語に関する理解が深まるのはもちろん、さらに自分の考えを英語でしっかり伝える能力も身に付きます。ぜひここで言語のプロフェッショナルとして成長してください。