人文社会科学部研究室探訪●Part11(vol.2)page1

准教授 長谷川 弓子001
准教授 長谷川 弓子002
准教授 長谷川 弓子003

Profile
HASEGAWA Yumiko
甲南女子大学文学部人間関係学科社会学専攻(1998年)、中京大学体育学研究科スポーツ認知・行動科学系【修士】(2009年)、同【博士】(2013年)


スポーツ心理学では、どんなことを学べるのでしょうか


スポーツ心理学における4つの領域は「運動制御・運動学習」「スポーツと社会心理」「スポーツと臨床」「スポーツと動機づけ」です。

 名称に「心理学」と付いているので、皆さんが真っ先に思い浮かべるのはメンタルトレーニングについてだと思うのですが、精神面だけでなく身体の動きもあわせて考えるのが、スポーツ心理学です。スポーツ心理学は私の研究領域である「運動制御・運動学習」をはじめ、「スポーツと社会心理」「スポーツと臨床」「スポーツと動機づけ」と大きく4つに分かれています。「スポーツと社会心理」は、チームビルディングやリーダーシップといった「集団」における問題と、スポーツと個人のパーソナリティのような「個」の問題を扱う領域です。「スポーツと臨床」ではメンタルトレーニングや燃え尽き症候群「バーンアウト」などの問題を扱います。「スポーツと動機づけ」では、原因帰属、目標設定、やる気などの関連について学びます。学生にとっては「どうやってやる気を維持しながら競技力向上につなげるか」という現実的な問題に結びつけやすく、最も興味のある領域のようです。動機づけは、実際にスポーツを取り組む際にはとても重要な問題です。やる気の性質と、その人の持っている目標やパーソナリティとがどう関連していくかなどを考えます。


心と身体は切り離して考えることはできません。その関連を考えながら、動機づけ、パフォーマンスなどさまざまなテーマを扱います。

自分がそのスポーツをしていて楽しいとか、自分自身の成長が嬉しいとか、その課題自体に面白味を見出すタイプ「課題思考」と、より少ない努力でいかに目標を達成するか、あるいは人と比較して自分がどうかということに重きをおく「自我思考」というタイプに分けることができるのですが、そうした目的に対する考え方が後の行動にどう関わってくるのかといったことは重要ですね。特に今現在、自分自身が競技者である学生にとっては身近な問題なのだと思います。

実際の競技にも学んだことを生かせるということですね


競技において自分自身のパフォーマンスを高めることができるほか、指導者として誰かのサポートをする知識も身に付きます。

 学習したことを実際に自分で取り組んでみることもできますし、誰かをサポートすることにも役立つと思います。プレッシャー下で最高のパフォーマンスを発揮するための心掛け、どうすれば挫折を乗り越えることができるか、などについて考えることは、運動指導にも生かせると思います。私自身スポーツメンタルトレーニング指導士としても活動しておりますので、将来的に運動指導の仕事に就きたいという方にも積極的にアドバイスをしていきたいと考えています。

先生は元プロゴルファーということで、その経験を学生たちに話されることもあるのでしょうか


答えは一つではありません。基本を踏まえながらも、その場の環境に合わせ自分なりにやり方を変えていくことが大切です。

 そうですね。ゴルファーとしての経験はあくまでも主観的なものではあるのですが、難しい課題に直面したときに私自身がどう感じたかとか、何を考えたかといったことも機会があれば授業で話すこともあります。物事は、何か一つ絶対的な答えがあってそれだけやっていれば全てうまくいくということじゃないですよね。ある方法でうまくいっても、次の機会にその方法を用いれば必ずうまくいくとは限りません。ですので、例えば勉強したことが全て正しいわけではなく、その場の環境に合わせ自分なりにやり方を変えていくことが大切です。将来的にスポーツ振興を通して地域活性化を目指す仕事に就いたり、スポーツインストラクターとして活躍したりする学生もいると思いますが、私の授業を通して、一つの答えに縛られない社会人になっていってほしいですね。

先生は今どんな研究をされているのでしょう

 最初に少しお話ししましたが、スポーツ心理学における4つの領域のうち「運動制御」あるいは「運動学習」と呼ばれる領域が私の専門です。分かりやすく説明すると、私たちは生まれたばかりでは自分でコップの中の水を飲むことはできませんし、ペンを上手に動かして字を書くこともできません。一つ一つを何度も練習していくことによって経験を積み、徐々にできるようになっていくわけです。それをスポーツで考えると、上手な人と下手な人とでは動きがどう違っているのか、あるいは同じ運動を繰り返したときに同じように繰り返すことができる人と、できない人とでは何が違うのかという問題にもつながっていきます。「運動学習」は、運動技能の習得について科学的に考えることで、上達のボトルネックを解明していこうと考える領域です。この研究の中で、私が特に興味を持っているのは動きのスマートさです。スポーツの熟練者はフォームも美しいですよね。スマートな動きがどのように達成されているかということに関心があります。さまざまな条件のなかで、動きがスマートな人とそうでない人とではどう違うのかといったことを計測し、その動きを生み出す違いについて考えていきます。私たちの脳は情報処理装置であり、パソコンに例えるならば、入力されたものを処理して判断し命令を出すCPUです。心理や思考などの情報処理過程は外部から見えないので、与える情報や周囲の環境を変化させ、出力される動きを計測することによって、その過程を推測します。