人文社会科学部研究室探訪●Part11(vol.3)page1

准教授 江原 勝行001
准教授 江原 勝行002
准教授 江原 勝行003

Profile
EHARA Katsuyuki
早稲田大学法学部(1995年)、早稲田大学法学研究科公法学専攻【修士】(1997年)、同【博士後期課程満期退学】(2003年)


江原先生が担当する授業について、その内容を教えてください


「統治機構」と「人権」が憲法学習の二本柱です。民主主義と立憲主義について深く考えていきます。

 一般的に憲法の授業は「統治機構」と「人権」に分けられており、「統治機構」では、立法・行政・司法の三権がどう組織されているのか、また、どういう原理に基づいて権力行使が行われているのかを学びます。国家権力のあり方、特に民主主義との関係について考えるということですね。もう一つの柱である「人権」では、人として、また国民として備わっている基本的権利の保障について考えます。国家権力の行使においては、原則として国民の人権が侵害されてはならないわけですが、人権に対するどのような侵害や制限であれば許されるのか、人権保障の限界に関する考察を通して、立憲主義のあり方について学ぶことになります。

憲法を学ぶ魅力はどういったところにあるのでしょう


論点を明確にしたり根拠を持って的確に反論したりと、自分の意見をしっかりと主張するための知識・考え方が磨かれます。

 人権というものは、憲法や法律によって保障され、また周囲から尊重されたりしていると、当たり前のものになってその重要性に気がつきません。したがって、人権のことを普段の生活において意識することはあまりないでしょうが、学校や会社などで理不尽な扱いをされたとき問題になります。大学生のうちに人権の重要性を認識し、深く学ぶことで、将来社会生活を送る上での武器の1つになるのではないでしょうか。実際に目の前に現れた人権侵害はもちろん、人権や政治をめぐって社会で起きている様々な出来事についても「このケースの論点はここにある」と情報を整理したり、「この主張はここに問題がある」と根拠を持って反論したりと、掘り下げて考えることが可能になるでしょう。
 国家権力との関係という面でも、政治家や官僚、裁判官といった人たちの権力行使に対し、間違ったところがあればすぐに気づくことができますし、批判的な視点を身につけることができると思います。

学生に人気のテーマについてお伺いしたいです


ヘイトスピーチやプライバシー侵害など、実際に現代社会で起きている問題に関わるテーマが学生に人気です。

 やはり比較的身近に感じられる人権保障の問題で、特に表現の自由やプライバシーに関する問題に学生は関心を持つようです。例えば、ヘイトスピーチは道徳的には許されるべきではないという考えはあっても、表現の自由が憲法によって保障されていることに照らし合わせると、どういう根拠でヘイトスピーチを規制できるのかといった問題があります。それからプライバシーとの関わりで言うと、インターネットが普及した現代ならではのテーマとして、個人の前科がネット上で検索できる状態がプライバシー侵害になるのではないかという問題もあります。もちろん犯罪は非難されるべきですし、過去の犯罪歴は一般に関心が高く、公共の利益を考えると公開すべき場合もあるでしょう。ですが、罪を償った後もずっとその犯罪歴が他者に知られる状態というのは、プライバシー侵害と認定してもよいほどの精神的苦痛を本人に与えます。その両者の主張を踏まえ、自分はどんな根拠に基づいてどう考えるのか、そこを掘り下げて答えを導き出すことに学生は挑戦しています。
 進路については、ここ数年私のゼミをとる学生は公務員志望が多いです。勤務地も地元の市役所や県庁に限定せず、国家公務員まで選択の幅を広げる傾向があります。

講義やゼミで気をつけていることはありますか


学生に指導や助言をする際のタイミングや度合いなどについては、今後も考えていきたいですね。

 専門書を読めば詳しいことも書いてあるのですが、難しい言葉が多かったり論点が分かりにくかったりするので、なかなかスムーズに理解することができません。私の役割はその理解を助けることにあるので、難しいことを難しいまま説明するのではなく、できるだけかみくだいて、抽象的な概念や理論については例えを挙げるとか、現実の政治と関連づけながら説明するといったことを心掛けています。
 ゼミについては学生が主役で、各自が調べてきたことを発表する場ですので、その際の議論が深まるようにガイドをするのが教員の役目です。日本の高校までの教育では討論の訓練はあまり行われていないでしょうから、大学のゼミに入って「さあ議論しろ」と言われても、学生としてはうまく発言できないということがしばしば見受けられます。ですから教員としては、少しでも学生の関心をひくような疑問を提示してみるなど、意見交換を行いやすい環境をつくることができればいいなと。それから、例えばある学生の意見が誤った知識に基づいていたり、学生の発言によって論点がずれた方向に向かっていく場合は、すぐに訂正すると学生が萎縮してしまい、自由に発言することが難しくなってしまいますので、タイミングをみてアドバイスをするようにしています。