人文社会科学部研究室探訪●Part1(vol.4)


■樋口先生が、歴史に興味を持ったきっかけは何ですか。

 僕が小学生になるころに神奈川の平塚へ引っ越しをしたのですけど、近所の古墳や城跡なんかに行ってみては、勝手に当時の様子を思い描いて楽しんでいたのが、歴史に興味を持つきっかけだったのじゃないかな。
 でも、高校時代に先生から「ここは試験に出るから暗記しろよ」といわれて、暗記もそうだけど、試験のためというのも、また嫌で歴史は大嫌いな科目になってしまいました。幸い大学に入って、また歴史が面白くなりましたけど。

■歴史は暗記というイメージがありますけど、樋口先生は違ったのですね。

 「これは出題するから覚えなさい」という勉強は、やっぱりつまらないんですね。僕の講義では、「これは覚えなくてもいいから」と前置きすることもありますし、試験も講義のノートを参照していいことにしています。要は調べることができればOKなのです。
 年号とか人名を覚えることにストレスを感じるよりも、生き生きとした歴史の世界の面白さを味わってもらいたいと考えています。実は、僕も年号とか人の名前とかよく忘れるからかもしれないですけれど(笑)。

■大学ならではという気がしますね

 大学で学ぶということは、解答を導き出すプロセスを大事にするということです。それから、正しい答えというものにとらわれないということかな。一般的に正しいといわれているものが、なぜそうなのかと検証したり、この面では正しいけれど、別な面では正しくないかもしれない。そういう批判的な見方が、ことさら必要になってきます。例えば、教科書においても、現在の記述と20年前の記述、さらに30年前の記述では、内容の異なるところがたくさんあります。それは、古い学説から新しい学説に変わったからです。つまり、学問とは、なぜそれが正しいかを検証するところから始まることが多いのです。

■大学で学ぶのに大事なことは何でしょう

 自分自身の見解を述べてみるという事ですね。根拠や材料を掘り下げて、自分の頭でどういったことなのだろうと考えることです。
 以前、講義で「僕の言うことを信用するな」と言っていました。どんな立派な人が語ろうと、本に書いてあることだろうと、必ずしも正しいということはない。ましてや、僕の講義を信じるな!疑え!ということです。乱暴かもしれませんけれど、これが10年前位まで効果てきめんで「先生はこう言ったけど、本当はこうではないのか」と学生は突っ込んできましたね。最近の学生だと「私たちは何を信じればいいの」と絶望的な顔をするのが多い。ちょっと寂しいかな。

■アジア文化コースの特長について教えてください

 アジアの中でも特に東アジア、それから日本と中国を学びます。文学や語学、歴史、思想についてと研究分野も多岐にわたります。特徴は、ひとり1人に担当の先生がつくということです。学生の興味に最も近い先生がマンツーマンで指導するのです。学生によっては、学問だけでなく生活全般のことまで相談している者もいます。アジア文化コースは、教員と学生のコミュニケーションが密であることが、よいところだと思っています。ただし、パワーポイントやパソコンを駆使するような新しい形の授業ではないかもしれませんね。論文指導にしてもアナログが売りです。あれっ?それは僕だけかも(笑)。

■学生コメント

― Mさん ―

 樋口先生のよいところは、私たちを学生扱いしないで、対等に話してくれる気がするところです。研究内容はもちろんですが、ご自身のプライベートのことまでベラベラと喋ります(笑)。先生はとても愛妻家なので、ご機嫌ななめの時には、「先生、奥さんとどうなんですか?」と聞くとデレデレとなって…… そんなところも魅力のひとつかなと。

― Oさん ―

 最初のころ「本当にこれが正しいの?」とツッコまれて、ちょっと怖いかなと思ったんですけど、実は、とっても気さくな先生でした。研究のことともなれば、話は尽きません。先生に指導を受けて、自分で考えるようになりましたね。とてもよかったと思っています。いまでも「本当にこれが正しいの?」とツッコまれますが、いつかツッコミ返したい(ここで、先生と目が合う)…… いえ、自分はまだまだだなぁと思っています(笑)。

■樋口先生の研究について教えていただけますか

 ひとつは、飛鳥・奈良時代の古文書を用いた研究ですね。正倉院に遺されたものとか、各地で出土した木簡(もっかん)と呼ばれる木片に記載された書類のようなものとかを分析して、その時代に国家が行っていた統治システムなどについて研究しています。
 それから、いま阿弖流為(アテルイ)の本を執筆しています。阿弖流為については、これまできちんとした史実に基づいて書かれていないんです。最近発展がいちじるしい考古学研究の成果にも多くを学びつつ、あらためて文献史料をじっくりと読み直しながら、本当の歴史の真相に迫りたいと思っています。これまでとはずいぶん違うアテルイ像が描かれると思います。

■ズバリ!ひと言。大学とは何ですか?

 必ずしも学問を最優先しなければならない時代でもない。そのうえで言えるのは、やはり大学でしかできないいろいろな経験を大事にしていってほしいということですね。

歴史は好きだけど、暗記は大嫌いでしたね 歴史の勉強が、暗記だけにとらわれてはもったいない
教科書だってコロコロ変わる。知識を妄信してはいけない 権威に惑わされない、だから、僕の言うことも信じるな 学生ひとり1人に先生がついて指導するのが特徴 学生には自分でしっかりと考える社会人になって欲しいですね 歴史の研究は想像力が大切。究極の異文化交流なのです


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