人文社会科学部研究室探訪●Part1(vol.5)


■先生は、植物が好きとお聞きしておりますが、きっかけは何でしたか?

 植物そのものが好きですが,植物のつくりだす空間に興味があります。私は東京の下町で生まれ,高校のころまでは建物が密集する場所で育ちました。緑といえば路地の植え込みのような人工的なものでした。そのため,広がりのある大自然のもつ得体の知れない魅力に,何かを感じていましたね。大きなものを解明してゆくためには,そこに生活している植物を知らなければなりませんので,植物標本を作ることからスタートしました。ひとつ一つ知っていくことがさらなる興味へとつながっていきました。

■先生は、岩手大学ミュージアムのご担当でもありますよね。

 はい,そうです。今年からミュージアムの兼務教員になりました。ミュージアムの運営や展示に関する様々な問題に対応しなければなりませんが,これからです。植物標本を作ることもその一環となると良いのですが(笑)。ミュージアムでは岩手大学のこれまでの研究成果を整理し,展示・公開しています。学部ごとに色を決めて見やすくなっています。ぜひ一度ご覧ください。もともと,ここは岩手大学の前身である盛岡高等農林学校時代の図書館でした。歴史の上に成り立っているので,まさに知の殿堂でしょうか(笑)。

■環境科学コースでは、どういったことを学びますか?

 なにはともあれ,私の研究室にはいると植物の名前を覚えなければなりませんよ(笑)。小学校のころから200種類ぐらいの植物は教科書に出てきているので,知っているはずですが,それがなかなか大変です。また,標本づくりもあります。これまで漠然と見ていたものの名前をまず覚えることから,自然に対して興味が増していくはずです。人だってそうですね。名前を覚えることによって友達になりますよね。友達といえば1課程1コースなので,入学してから4年間,ずっと同じメンバーです。これも環境科学コースの特徴ですね。それから3年生の段階から各研究室に所属するために,比較的早い段階から専門的な分野が学べます。環境科学自体はたいへん幅の広い分野ですので,2年生までは多岐にわたって学習します。そのなかで自分の興味のある分野をセレクトできればよいですね。自分で研究課題を決めれば,深く学べると思いますね。

■最近の学生の印象は、どうですか

 そうですね。以前は山登りが好きだから,山に入っていろいろ調べてくるという学生がいましたね。近頃の学生は、外に行くことが少なくなったような気がします。もしかしてバソコンで検索すれば、なんでもでてくるようになったからかもしれませんね。ただ、それは他人がつくったものをもらっているに過ぎないのですね。自ら動いて得られた知識ではないということをわかったうえで活用して欲しいですね。そして、自分で動いて得られた喜びを知って欲しいとも願っています。

■学生に望むことをお聞かせください

 自分なりの足跡を残すということですね。足跡というのは記録と言い換えられるかもしれません。先ほどのミュージアムというのは,まさに記録そのものですけど。大学で学ぶということは自分なりの記録を残すことであってほしいですね。特に若い人たちはなにに対しても挑戦できます。そのなかで自分なりのものを見つけて,自分の中に残してほしいですね。それがのちの財産になると思います。

■先生の研究する植生学についてお聞かせ願えますか。

 ある場所の植物社会,植物の集団といった方がいいかな。その植物の集団の構造や働きを研究しています。ひとつの植物がどのように環境に関わっているかということではなく,植物が集まることによって生まれる大きなパワーのようなものについて知るということです。また,植物に人間がどのように関わっているかについても研究しています。たとえば天然記念物という制度は,生き物をある状態に保つための制度で,人間が自然に関わるひとつの例かもしれません。どこまで人間がかかわればよいのかという問題もあって,自然のままがよいとも限りません。対象はいろいろありますが,私がいま研究しているものとして湿原があります。湿原は周囲の環境によってこわれやすものです。ですから,周囲を含めた環境を研究しているのです。いま残っている湿原を守っていかないと,近い将来,名もある大きな湿原以外はなくなっていくでしょう。それは森林でも河川でも海岸でも自然は破壊されています。残された自然をどうすればよいのか,真剣に考えてもらいたいものです。

■岩手には自然が残されている印象がありますが。

 そうですね。岩手県は自然がいっぱいで,研究する場所がたくさん残されている印象があるみたいですね。ただ,本当は自然がよい状態で残された場所はわずかしかありません。緑に囲まれてはいますが,ずいぶんと人の手が入っています。私は,毎年,シベリアに行っています。それからアマゾンの熱帯にも行ってきました。どちらもずいぶんと自然は失われています。世界中を見渡しても人間の影響を受けていない場所というのはなかなかないです。だからこそ,どこに行っても,いつでも人間との関わりを意識する必要があるのだと思いますね。

■ズバリ!大学とは何ですか!!

 自分の足跡を残すステージですね。

魅力や知ることが興味へとつながっていくのではないかな岩手大学は、約100年の歴史があります。これは大きいですよ 頭に環境と付く言葉は、山ほどあります。そのくらい多岐に渡っているのです自分で得た知識こそ、かけがえのないものだと思いますね大学を通過点にしないで、何かを残して欲しいと思いますね植生学とは,植物の社会を理解していくことです自然は思いがけないほど失われていますね。


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