人文社会科学部研究室探訪●Part2(vol.6)page1

Profile
IKEDA SHIGEKAZU
東京大学教養学部教養学科(科学史・科学哲学)1976年卒業、東京大学人文科学研究科倫理学1985年修了。

■先生の専門や研究テーマについて教えて下さい。


今現在の話をすれば、「いわての思想史」に興味があって取り組んでいます。

 いくつかのテーマを研究テーマとして持っていますが、今現在の話をすれば、「いわての思想史」に興味があって取り組んでいます。本来はドイツ思想(ヘーゲルなど)が専門なんですが、ごく最近日本の思想史をやりたいと考えたのです。近代以降の日本の思想ですね。近代以降ですと日本の思想とヨーロッパの思想とはつながりがありますからね。
最近の研究についてですが、私は釜石出身なんで、そこから話さないといけませんね。10歳まで釜石にいて名古屋に移りました。一家でね。親の仕事が製鉄の関係でしたから。13歳の時に東京に出ました。これも親の関係です。大学院を修了して岩手大学に就職しました。私の大学の研究室では、出身県の大学へ就職できるのはめずらしいと言われました。そういう出身のいきさつもあって、「日本における中央と地方」を思想史として考えたいと思っているんです。

■日本の思想史と岩手とはどんな関わりがあるのですか?

 日本の思想史における岩手という地域は非常に重要で、高野長英、新渡戸稲造、石川啄木、宮沢賢治などがいて、これほど近代に集中して思想家を出している地方、県はめずらしいんじゃないかと思いますね。岩手出身の身としてもそうだと思うし、岩手出身でなかったとしても、中央と地方の問題を考えたときに岩手はとても重要な地域だと言っていいと思います。中央と地方の対立の中で日本の近代は作られてきたとも言えるわけで、その意味からも「いわての思想史」に取り組むことに大きな意義を感じてやっています。

■岩手の思想家の中で誰に注目していますか?


明治時代が文明の時代とするなら、大正時代は文化の時代ということができますが、新渡戸稲造は「文明から文化への橋渡し」をしているのです。

 えーとね、みんな面白いんですよ(笑い)。面白い中でも新渡戸稲造かな。そうですね、「文明」ということが近代一般を考える場合にすごく重要で、文明をどう捉えるかが大事なんです。僕なりに言えば「文明をめぐる思想史」が重要だということになります。特に、日本の近代における「文明と文化」を考えなければいけない。明治時代が文明の時代とするなら、大正時代は文化の時代ということができますが、新渡戸稲造は「文明から文化への橋渡し」をしているのです。教育者でもあった新渡戸の教え子からは大正文化を先導した人々が多く輩出しています。福沢諭吉の「学問のすすめ」に感激したという新渡戸の思想を考えると、明治の文明思想の側面と大正の文化思想の側面の両面を持っていて二つがオーバーラップしていることがわかります。そこが新渡戸の面白さであり、重要性です。

■文化システムコースの特長にはどんなことがありますか?


これほど徹底的に文化を総合的に学ぶ環境づくりをやっている大学はあまりないと思います。

 人文社会科学部の学部全体の方針として、学問の総合性を考えて主副専攻という制度がありますね。主専攻コースに所属しながら他のコースごとに設定されている科目を副専攻として履修することで、一つの専門領域にとらわれることなく、別の観点からも専門性を深めることができます。
 さらに、文化システムコースでは、コースを総合的な学問が出来る場にするためのコース設計が行われました。具体的には、文化論コロキウムという手法、学生はゼミを2つ持つようにしたこと、学生研究室を先生の研究室の近くに置いて常に密接なコミュニケーションがとれるようにしたことなどがあります。この3つが大きなコースの特長です。これほど徹底的に文化を総合的に学ぶ環境づくりをやっている大学はあまりないと思います。