人文社会科学部研究室探訪●Part4(vol.2)page1

研究室探訪 vol.02
「対象の背景や周辺を調査し、制約にとらわれず分野を横断するような、広がりのある文化研究を」 教授 山本 昭彦
国際文化課程(文化システムコース担当)【人文科学】

Profile
YAMAMOTO Akihiko
国際基督教大学教養学部人文科学科(1981年)パリ第8大学博士課程フランス文学・比較文学科、フランス文学・比較文学コース(1984年)国際基督教大学比較文化研究科比較文学(1987年)文学修士


文化システムコースが対象とする分野は大変幅広い印象がありますが、どのようにイメージするとよいのでしょうか


「場所」の制約にとらわれず自在な対象を取り扱う分野です

 国際文化課程の3コースのうち、アジア文化コースと欧米言語文化コースは名前を聞くだけでもイメージがつかめると思います。それに対し文化システムコースは少しわかりにくいかもしれませんね。
 設立の意図としては「場所」や「地域」の制約にとらわれず、自在に移動するような文化も扱うことが考えられています。例えば、現代におけるオタク文化やコスプレ文化を取りあげるとき、もの自体と共にどんな時代背景を持つかといった面も対象として調査するということです。よく知られるところではエスニシティ論やジェンダー論といった、現代文化のさまざまな側面について取り組んでいる先生もいます。学生もヨーロッパの文化に興味を持ちながら、文化システムコースで学ぶ人がいたり垣根を高く設けないようにしています。学生としては、絞りきれずに、とまどってしまう人もいるようですが(笑い)。

授業を持たれている表象文化論について教えてください

 表象文化は、形を成している文化であればどんなものも対象にできる面があります。割と最近になって、いくつかの大学で学べるようになったもので、厳密な定義があるわけではありません。人間が持つ感情として、気持ちや欲望といった、なかなか形にできないものがありますよね。人はそういうものを映画で表現したり、絵画や文学で表現するとか、何かの形にして表現します。学生にはそうした何らかの形になった表現の研究が表象文化論である、と話していますが幅が広すぎてなかなか難しいですね。

文化システムコースの面白さはどこにあると思われますか


作中の文字だけでなく、そこに描かれた物事を調べるという研究を行う

 例えば文学を研究する場合、時代背景を調べると同時に、作中に絵画などが出てくれば、実際にその絵がどんなものなのか探し、見て考えるということを行います。貴族社会を連綿と描いたプルーストなどでは、サロンを舞台に頻繁に絵の話が出てきたり画家が出てきたりします。その画家はどういう絵が好きだったのか画集やネットで探し収蔵されている美術館を調べることで、現実の世の中に存在するということが実感として捉えられます。文学の授業でありながら、絵の話ばかりしていたり、ずっと写真を探したりするわけです。こうした授業はこの専攻でこそ経験できることですから、初めての学生には新鮮かもしれませんね。

周辺までを対象にその本質を学ぶわけですね

 実際に昔の作者もいろんな事を考え感じ、同時代の小説を読み感銘を受けたりして作品を作り上げていたわけです。文学、絵画、音楽とジャンル分けを決めつけず、それぞれを横断するような文化研究をやりたいと思っています。

先生が研究対象とされているボードレールや芸術批評について教えてください


150年前のボードレールの考えは今に通じる点も多々あります

 ボードレールは詩人として知られていますが、絵の批評もやっていた人なんですね。彼は画家としてテクニックがあるわけでもなく、特殊な技量をもってるわけでもなく、ある意味絵については素人です。にもかかわらず、画家の特徴や表現したい点を捉えたり、その内面にある、表面だけでは表しきれないものまで文章で記しているんですね。また、批評家についても、点数や甲乙をつけて偉そうに裁定を下すようなものは本当の批評では無い、ということを言っています。作品や作者について深く知り、その中身を見いだす。あるいは興味を喚起する助けになるような文章を書くのが批評である、ということを言っています。多くの人が世の中の事を数値にできることばかりもてはやし、自分自身で見ることをしないということも書いてるんです。最初にそうした言葉を読んだとき、ショックを受けるとともに大きな面白みを感じました。ボードレール=詩人という見方、あるいは当時の社会からは猥褻とみなされた詩を書いて発禁になった詩人であるという認識と共に全く異なる別の面を持ってたというのが僕にとって面白かった。150年くらい前のものだけど、現代においても当てはまる点が多くあると思います。