人文社会科学部研究室探訪●Part4(vol.3)page1

研究室探訪 vol.03
「社会の仕組みをなす分野を扱うために、意識されるべき基礎力と広い関心の充実」 教授 松岡 勝実
法学・経済課程(法学コース担当)【社会科学】

Profile
MATSUOKA Katsumi
ウェールズ大学(アベリストゥイス校)イギリス法研究課程(1990年)、創価大学法学研究科(1997年)、博士(法学)


法学・経済課程と法学コースの枠組みを教えてください

 法学・経済課程全体としては、それぞれを総合的に学ぶところから出発し、高学年次になり法学コースと経済コースに分かれます。経済と法律というのは、どちらも世の中の仕組みを担う大きな要素です。授業においても、まずは世の中全体について基本的なことに触れ、次に専門的に入っていこうということです。

法学と経済を並行して学べる点は特徴的な面ですね


法律とは世の中の仕組みを学ぶこと、とも言えます

 同じ社会の仕組みでも、経済は効率性や利潤を、法学は正義や公平の観点で見ていきます。ひとつのものを違った仕組みから見るということは、どんな学びにおいても大切なことです。売買を例にとると、リンゴが収穫できる所とミカンが収穫できる所が交換すればお互いに改善されます。これが経済的な考え方で、双方が得をする。法律はそこに発生する目的物の引き渡しや代金の支払いという点を中心に見るわけです。その行為が正義にかなったものであるか、詳細に見る。法学を経済学で分析する「法と経済学」という学問分野もあります。

先生は民法と水法をご専門とされていますね

 民事法学では最近、特に消費者問題や消費者契約法を扱っています。契約と言えば企業間取引や国際取引といったものから、コンビニやネットで買い物をしたり、携帯電話で料金を払ったりと、ごく身近に接しているものもあります。
 水法では伝統的に河川管理や水利権というものを対象に研究しています。日本は稲作地帯だから水利権は民法制定以前からあり、土地利用と深く関連しています。
 実は、消費者問題と水問題は密接に関連しています。消費者は何かしらものを買う時に、同時に資源を消費しています。全ての消費者が全ての資源を使用しているのですが、その中でもあらゆることとつながっている水資源に興味をもっています。現代では、常に環境のことも考えながらの消費者でなければいけない。生活するにしても、いろいろなことが要求されているんですね。


消費者はつねに資源も消費していると言うことも意識する必要があります

ゼミでは現実的な事例を挙げて進められているとうかがいました

 後期のゼミでは事例問題を取りあげ、模擬裁判を行っています。去年は特定商取引法のことをやりましたが、消費者問題だと、裁判所チームも身近な消費者のほうに肩入れしてしまうんですね。今年は不法行為の事件として、ため池を例に水の問題も含め取りあげています。近所の高松の池をイメージして、池の管理主体(県、市、委託業者など)をいくつか想定して法律問題を考えようとしています。

高松の池といった、岩大生には身近なものを取りあげられることも多いのでしょうか

 具体的になるので理解も進みますからね。ただし土地の所有権などの場合、あまり複雑すぎても時間が取られることがあるので、ある程度単純化しています。
法学に限らず、世の中に出ると答えの出ないものばかりです。試験の様にイエスかノーという明確な事例はないわけですが、1年生向けの授業で学生が「先生の話は面白いけど、ポイントがわからない」と言うんですよ。失礼な話しでしょ(笑い)。大事なポイントはどこか、優秀な学生ほど指示してほしがる傾向があるのではないでしょうか。試験に出るのはどこか、あるいは今日のまとめを、という風に。

受験勉強のスタイルですね


世の中では誰もポイントなどを示してくれない。そこを自分で探ることを覚えてほしい

 今までそれで慣れてしまっているんですね。しかし実際の世の中ではポイントなんていくらでも変わってくる。その意味でも僕は、学生にいろいろと関心を持って欲しいと思います。教育の最終的な目標は人間形成だとよく言いますが、学びを通じて人間や社会により大きな関心を持つことが大切で、法学はそのひとつの手段に過ぎないわけです。法学や経済では研究上必要とされる「合理的人間像」が想定されていますが、それが常に本当の人間だと思ってしまうのはどうでしょうか? 合理的人間は、約束を守り常に効率的な選択をします。しかし、実際には現実の人間はどれだけ約束破ることか。リスクや確率を冷静に考えれば、タバコは止め、宝くじは買わない方がよいのです。むしろ約束を破ったり、当たることを夢見て宝くじを買う、という方が生の人間の姿かもしれない。ただし仮にそうであっても、約束や契約が破られてもよい、契約で人を騙してもよいというわけではない。期待値や確率の計算は必要でしょう。そうした相反するような面も、学問を学ぶ上で興味深い点ではないでしょうか。