人文社会科学部研究室探訪●Part5(vol.1)page2

研究室探訪 vol.01
個人的側面と社会的側面から「人間行動」を分析 多角的な視点でその解明に迫る 教授 山口 浩
人間科学課程(行動科学コース担当)【社会科学】

Profile
YAMAGUCHI Hiroshi
東北大学文学部(1978年) 東北大学文学研究科(1984年) 文学修士


心理学を学ぶ上で大切な点はどういったところでしょう


仮説を立てることは大切ですが、そこでとどまらず少しでも実証的に検討していく姿勢が必要です

 心理学を学ぶ際には以下の3つの点を覚えていてほしいと思います。1つは実証性の重視。どうしてそう言えるのか、データ重視、エビデンス重視の視点です。もちろん、実証的なデータがないと全然だめかというとそうではなくて、質的な研究の中からさまざまな仮説を立てることはとても重要です。2つ目はデータの前では謙虚でなければならないということです。客観的に出てきたデータに対して、「こんなデータあるはずがない」ではなく、「これはある一つの真実なんだ」というスタンスが重要なんです。つまり、データの前では大先生のヴントも若い研究者や中堅の研究者もみんな平等ということですね。それから3つ目は決めつけないこと。人間の心は複雑ですので、決めつけられるものではありません。実際にカウンセリングなどでも、この人はどんな人だろうかと仮説を立てて聞いているんです。そしてクライエントの話からその仮説を修正していき、その人自身への理解を深めていきます。こんな人だと決めつければ、仮説も理解もなくなってしまいます。

ご担当されている授業について教えてください

 「こころの理解」「これからの健康科学」などの全学共通教育科目をはじめ、「実験心理学」「心理学基礎実験」「行動科学方法論」などの専門科目、「臨床心理実習・・・」「神経生理学特論」などの大学院科目まで幅広く担当しています。心理学の実験では、1号館や6号館にある実験室で脳波を中心に、血圧や呼吸、心拍のゆらぎなどを測定しています。

授業ではどういった学生が多いと感じられますか

 全学共通教育科目では、毎回レスポンスカードに質問や感想を記入してもらうのですが、ほぼ全員が書いてくれるのでまじめに取り組んでいる学生が多いなと感じます。中には難しい質問をしてくる学生もいたりして私自身とても勉強になっています。

そうした質問への対応はどうされているのでしょう


2年生になると自然と自発性や自主性が出てくる学生さんが多いですね

 なるべく学生の質問には答えてあげたいのですが、時間もあまりとれませんので、授業の中で4〜5つほど紹介する形をとっています。例えば授業に関してちょっと誤解があるなとか、この辺はもう少し追加説明した方がいいなといったような質問を取り上げます。また、授業を踏まえた上で発展的な質問とか追究する質問とか、これは受講生にとっても勉強になるので採用し解説します。また、心理学は日常とつながった部分がないといけませんので、日常にかかわってなおかつ勉強になる質問も選びますね。

これから行動科学コースを目指そうという高校生や学生の皆さんにアドバイスをお願い致します

 人間の気持ちや心に関心を持っている方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。そうした自分の関心を深め、取り組んでいってもらえればいいなと思います。しかし、実際に心理学に触れてみて自分の想像していたものとは違うなと感じたり、人間の心や行動に迫るときにもっと別の領域もあるのではないかという思いが出てくるかもしれません。そうした場合でも、自分の間口を広げ、自分が興味を持って取り組めるものは何なのかを考え、選び取ってもらいたいですね。
 また、行動科学は実験や実習など何かと作業の多いコースですが、やるとなったらとにかく続けて取り組んでいくことが大切です。そうすることで自分でも気づかないうちに相当な実力がつき、さまざまな領域に対応できる人間に育っていきます。「これは自分の専門じゃないから分からない」「習っていないからできない」ではなく、「とりあえずやってみる」というように新しいものにチャレンジする抵抗感がなくなるんですよ。これは就職した後も大いにプラスになると思いますね。

<学生のコメント>

○高校生のころから心理学に興味があり、考え事をするたびに「なぜこんなことを考えるのだろう」と疑問に思っていました。オープンキャンパスで、岩手大学では臨床心理学だけでなく、心理生理学や認知心理学などの幅広い分野が一度に学べると知り、このコースを選びました。
 現在は思考のゆがみについて研究しています。私自身とても悩みやすい性格で、落ちこみやすい人は自分に原因があると思いがちですが、それが正しいとは限りません。そこで、こうしたゆがみを心理療法で取り除くにはどうすればよいかについて考えています。山口先生は、研究で煮詰まった際に親身になって方法を考えてくださったり一緒に実験してくださるので、とても感謝しています。

○最初は勉強すれば心理学のイメージが変わるかなと不安に思っていましたが、授業を重ねるごとに面白くなっていきました。研究室では脳や認知(イメージ)について調べる人もいて、想像していた以上に広がりのある分野だと実感しています。
 山口先生は専門知識のない私たちにも分かりやすいよう細かく説明してくださるので、とても助かっています。褒めるところしかなく、まさに「温厚」という熟語がこの大学で一番似合う先生だと思います(笑)。
 心理学では、日常生活において常にアンテナを張り巡らすことが大切だと思います。「これって何だろう」「どうしてこういう反応をするんだろう」と疑問を持ち、それを研究に生かせることが心理学の醍醐味と言えるのではないでしょうか。