人文社会科学部研究室探訪●Part5(vol.3)page1

研究室探訪 vol.05
フランス文学・語学の研究だけでなく
より広範な文化を学ぶことができる広く世界を知りたい方に最適なコース 教授 横井 雅明
■国際文化課程(欧米言語文化コース担当)【人文科学】

Profile
YOKOI Masaaki
愛知大学法経学部経済学科(1984年)、名古屋大学大学院文学研究科言語学(1987年)、名古屋大学大学院文学研究科言語学(1989年)、文学修士


欧米言語文化コースで学ぶ魅力を教えてください


欧米言語文化コースはかつての文学部と異なり、より広範な文化を学べることが魅力の一つです

 欧米言語文化コースは文字通り、欧米の言葉や文化を研究するコースで、「欧米史」「英米言語文化」「ドイツ言語文化」「フランス言語文化」「ロシア言語文化」の5コースに分かれています。欧米史コースではヨーロッパやアメリカの歴史について、英米・ドイツ・フランス・ロシアの各言語文化コースではそれぞれの言語や言語文化圏の文化、文学などについて学びます。ここで強調したいのは、岩手大学の欧米言語文化コースはかつての文学部とは異なり、フランス文学やフランス語学などの研究だけでなく、より広範な文化を学べるということです。特に最近では文化に興味を持つ学生が多く、フランス言語文化コースで言えば、過去の卒論テーマに「フランス映画」「ワイン」「ファッション」「食文化」「教育制度」などがあります。また、2つ以上の言語ないし文化の対照研究ができるという点も魅力で、「日・仏・英語のオノマトペ(擬音語、擬態語)の対照研究」といったものもありました。このように、研究分野および言語の垣根が取り払われた点が欧米言語文化コースの良いところだと思います。

フランス言語文化コースではどのようなことを学ぶのでしょう


フランス語は発音が明瞭なので、大人になってからでも学びやすい言語ではないかなと思います

 フランス言語文化コースには現在3名の教員がいます。「フランス文学講義」を主に担当されている中里先生、「フランス語コミュニケーション」を主に担当されているグラ先生、そして「フランス語構造論」を主に担当している私です。このコースでは、フランスおよびフランス語圏の文学・文化、フランス語の文法・音声構造などを学べるほか、「フランス語通訳・翻訳実習」などコミュニケーションの授業を多数開講していますので、フランス語の会話能力や読解力まで養成することができます。

横井先生の専門分野について教えてください


実際にネイティブスピーカーによって話されている内容から話し言葉に見られる特徴を見いだすことが談話分析の面白みですね

 フランス語学というのは、フランス語を対象とした言語学のこと。言語学には音声、意味、文法などさまざまな分野がありますが、私が主に担当しているのは文法と談話分析です。文法研究ではフランス語の動詞の時制、特に過去の時制の用法や、定冠詞・不定冠詞といった冠詞の用法について研究し、談話分析では、文学作品のように書かれたものではなく、実際にフランスのネイティブスピーカーによって話された内容を録音し、それを文字化した上で話し言葉に見られる特徴的な現象を分析しています。

研究テーマとしてはどのようなことに取り組まれていますか

 研究テーマは大きく3つに分けられます。1つは、大学院時代に知ったフランスの言語学者、ギュスターヴ・ギヨームの言語理論について。この言語学者はフランス言語学の研究の中でもかなりユニークな位置づけで、あまり主流ではありませんが、私はこの言語理論を応用してさまざまな言語現象の解明を試みています。2つ目、3つ目は、先ほども言いました動詞や冠詞の文法的研究と談話分析です。動詞の研究としては、英語の過去進行形にあたる半過去という形のさまざまな用法を研究しています。談話分析では、例えば、ネイティブスピーカー2人が会話しているときに、話題がどんどん変わっていく中で、そのトピック(主題)がどのような指標、つまり印でもって談話に導入されているかについて興味を持っています。

なぜフランス語学に興味を持たれたのですか

 随分遡ってしまうのですが、そもそも私がフランス語に興味を持ったのは中学生のころなんです。ラジオでフレンチポップスを聴いたときに、フランス語の発音の美しい響きに魅了され、大学に入ったら絶対フランス語を勉強するぞ、と。それで実際に学んでみて、より惹かれていったんですね。ただ私の場合、フランス語といっても文学にはあまり興味がなかったんです。そこで、もう1つの分野であるフランス語学とは一体どのような学問なんだろうと思い、図書館で調べていたときに見つけたのがスイスの言語学者ソシュールの『一般言語学講義』なんです。言語学関係の本はあまり読んだことがなかった私にはやや難解でしたが、それでもある言語外概念が言語によってさまざまに表現され、また言語外の事物は言語によってさまざまな仕方で分けられるということにとても興味を持ちました。例えば羊は、英語では食肉としての「mutton」と動物としての「sheep」という別々の単語で表現されますが、フランス語ではどちらも「mouton」という1つの単語で表されます。また日本語では姉妹について話すとき、「姉」「妹」という独立した単語が使われ、年上か年下かを表現し分けることが普通ですが、英語では「sister」、フランス語では「soeur」と、1つの単語だけでは年上か年下かは表現されません。このように実際の事物や概念は言語によって表現のし分け方が異なることを知り、このことはソシュール研究者の丸山圭三郎氏の本を読んで、さらに興味が増していきました。