人文社会科学部研究室探訪●Part6(vol.3)page2

研究室探訪 vol.03
研究室探訪 vol.03
研究室探訪 vol.03

Profile
OTOKITA Nobuhiro
東北大学文学部哲学科哲学専攻(1989年)、東北大学大学院文学研究科哲学専攻(1998年)、博士(文学)


講義ではどのようなことに興味を持つ学生が多いですか


教えるというより、学生さんに問題を見つけてもらい、答えてもらう。私はその手助けをするだけです

 そうですね…どちらかと言えば、専門的なことよりも応用的なことに興味を持つ学生さんが多いようです。私としてはもっと、例えばさっき言ったデカルトやメルロ=ポンティといった哲学者の思想そのものに興味を示してくれるとうれしいのですが、応用的なこと、例えば進化生物学的な研究がどのように人間性を解明していくのかといった授業や、生命倫理学と言われる医療の倫理に関する授業が好評です。遺伝子の話で言えば、人間の遺伝子治療を行う際にどれくらい遺伝子をいじっていいのかだとか、それ以上してはいけないのではないかというのが一つの倫理的議論になります。生殖医療にしてもそうですが、やはりどこまでしていいのかというのが最大の問題になりますから。あとは安楽死や臓器移植、原発の倫理的問題など、学生さんの興味は本当にさまざまです。しかし私は、こうした応用的な問題を考えるにあたっても、その根底には共通して「人間とは何か、どういう存在であるのか」といった哲学的な問いが控えていると考えます。

学生の理解を深めるために指導等で工夫されていることは


その日授業で取り上げた内容をクイズ形式で出題し、哲学者の思考のプロセスを追体験してもらっています

 一方通行にならないよう、学生さんには意見や質問を書いてもらうことが多いです。授業中に「質問してください」と言っても、なかなか皆さんしない方が多いので、紙に書いてもらうようにしているんです。そのとき、その日取り上げた内容をクイズ形式で出題することもあります。例えば「デカルトの『我思う、故に我あり』という命題は本当に正しいか。もしそれが間違っているとするならば、自分で命題を考えてみてください」といった設問です。書いてもらったものはプリントして次の授業で配ります。配布の際には匿名にしていますので本人を特定することはできませんが、ほかの人はこういうことを考えているんだというのがひと目で分かりますよね。学生さんには哲学者の思想をただ暗記するのではなく、自分でまず考えてもらいたいんです。面白いことに、皆さんに書いてもらったことの中には実際に哲学者が言ったようなことが書かれてあったりするんです。そうすると、「あの哲学者はこういうことを考えてこれを言ったのか」という、いわば思考のプロセスを追体験することができますよね。これはある授業の一コマですが、ゼミや卒論指導などでもこうした対話を大切にし、「私が教える」というよりは「学生さんに問題を見つけて答えてもらう」といった手助けの方に力を入れて指導しています。

人文社会科学部を目指す高校生に、人間科学課程で学ぶ面白さやアドバイスをお願い致します


学問は人間がいる中でクロスオーバーしている。これは高校時代には味わえない一つの楽しみと言えるでしょう

 はじめに言ったように人間科学課程にはさまざまな分野の先生がいらっしゃり、各々がお互いの領域を尊重していますから、どの分野でも総合的な観点から学ぶことができます。つまり心理学を勉強するにしても、社会学や哲学、情報科学などが一緒に学べるということ。そういった意味で、好奇心さえ持っていれば、広い視野を持った専門家をいくらでも育てられると思うんです。複数の先生が担当するオムニバス授業や、分野の異なる二人の先生が行うゼミもいくつかありまして、例えば私と情報科学の先生が組んだ場合、一つのテーマに対して哲学・倫理学的なアプローチと情報科学的なアプローチが一緒に体験できるといったゼミも行っています。新しく入学される皆さんにはそうした学際性や総合性が教員という生身の人間のレベルで実践された授業というのを体感してもらいたいと思います。学問は区分けがあってそれぞれが存在しているのではなく、人間がいる中でクロスオーバーしているんだということをぜひ。これは岩手大学ならではの面白みだと思いますよ。  また、私自身、大学時代に友達や同級生、先生など人生に影響を与えるさまざまな出会いがありましたので、そういった人との出会いも楽しんで大切にしてもらえればと思います。

<学生のコメント>

○3年次のコース選別の際、まだやりたいことがはっきりしていなかったのですが、人間情報科学コースには言語学や哲学、情報科学などさまざまな分野があり、そこに行けばきっとやりたいことが見つかるはずと思い、選びました。このコースでは、あまり「これだ!」と決めつけずに柔軟に考えることが大事。分野同士のつながりが深いので、柔軟な発想ができれば勉強していて気づくことも多いです。
 今、身のまわりにはさまざまな情報があふれていますが、そういったものをすぐに信じず、一度立ち止まって考えてみる姿勢が身についたのは音喜多先生のおかげだと思います。先生は私たち学生の話をしっかり聞いて、考えや意見を否定せずに受け止めてくださる、優しい先生です。
○人間情報科学コースでは人間を学際的に見ることができるため、ここでさまざまな視点を持って人間について考えてみたいと思いました。
 私が人間科学課程に入ったのは「人間って何だろう」と疑問に思ったから。こうした探究心を持ち続けることが勉強する上での楽しさにもつながってくると思いますので、たとえ今やりたいことが分からない人でも、焦らずに4年間を過ごしていってほしいなと思います。
 音喜多先生には、卒論はもちろん、進路についても相談に乗っていただきました。ゼミの中でもいつも就職活動の様子を気にかけてくださり、私の不安を取り除いてくださいました。おかげで就職も決まり、とても感謝しています。