人文社会科学部研究室探訪●Part7(vol.2)page1

准教授 川村 和宏001
准教授 川村 和宏002
准教授 川村 和宏003

Profile
KAWAMURA Kazuhiro
茨城大学人文科学研究科【修士(学術)】(2001年)、東北大学文学研究科【博士(文学)】(2010年)


岩手大学における国際文化課程の特長は


欧米言語文化コースでは、欧米の言語や文学、文化、歴史、コミュニケーション論、言語教育法について学ぶことができます。文学作品や言語構造の比較、比較文化的な研究にも取り組める点が当コースの利点と言えるでしょう

 国際文化課程には「欧米言語文化」「アジア文化」「文化システム」の3コースがあり、共通の特長としては、世界的(グローバル)な視野と地域的(ローカル)な意識を持って研究に取り組んでいるということでしょう。
 世界的な観点から各地域の言語や文化、文学や歴史を見直すことにより、さまざまなテーマを新たな切り口から扱うことができます。例えば、地域に根ざしたものと考えられてきたドイツのグリム童話と東北地方の民話を比較したり、両者の関係性を跡づけるといった研究も、世界的な視野があって初めて発想される手法と言えます。
 そのための手段として、英語やドイツ語をはじめとする欧米やアジアの言語運用能力という意味での言語コミュニケーション能力を重視していることも課程の特長の一つです。この言語運用能力には「読む」「書く」「話す」といった行為が含まれます。
 欧米の言語について言えば、読む能力は、演習科目などで専門的な文章を読み進めることで身につけていきます。書く能力は、作文の授業で簡単なレジュメを書くことから始めるのですが、その際に論文の書き出しや話題の転換、結論のまとめ方など、学術的な文章の書き方を学んでいきます。話す能力は、各国のネイティブによるコミュニケーションの授業が用意されていますので、そこで実践練習を重ね、対話力に磨きをかけていきます。

欧米言語文化コースではどのようなことが学べるのでしょう

 欧米言語文化コースでは、英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語といった欧米の「言語」と「文学」、「文化」、さらにこれらを学ぶ上での基礎となる「欧米史」や「言語教育」、「コミュニケーション論」についても学ぶことができます。もし、ドイツ語で書かれた文学に興味があれば、「ドイツ」の「文学」に関する卒業論文を書くとよいでしょう。また、欧米言語文化コースという枠組みの利点として、フランスやロシアとドイツの文学作品の比較、英語とドイツ語の構造の比較など、比較文学や比較語学、比較文化的な研究に取り組むこともできます。
 海外へ留学する学生が多いのも欧米言語文化コースの特色ですね。英語圏やフランス、ロシアへの交換留学制度もありますが、ドイツ語専攻の学生たちも短期留学などで積極的にドイツ語圏へ語学留学に行っています。留学の一番の効果は、大学で学んだ文法や語彙、発音などがいわゆるネイティブに通じるのを確認することで自信がつき、学びに弾みがつくということ。留学に関しては教員が親身になって相談に応じますから、興味のある方はいつでも話を聞きに来てほしいと思います。
 また、欧米言語文化コースでは、英語をはじめ、ドイツ語、フランス語、地理・歴史の中学校・高等学校の教員免許を取得することもできます。ドイツ語で教員免許を取得できる大学は少なくなっている印象がありますから、教員免許の価値は相対的に高まっていると言えます。岩手大学では毎年、ドイツ語の教員免許が取りたいと相談に来る学生がいますね。

欧米言語文化コースで学ぶ学生には、どういった能力を身につけてほしいですか


これからの時代必要となるのは、異なる地域や文化、学術分野等をまたいだ知識をコーディネートする力。岩手大学では、各分野の知識を総合的に融合し、新たな視点を獲得できる人材を育てようという機運があります

 これは人文社会科学部全体に関しても言えることですが、これからの時代は異なる地域や文化、学術分野をまたいだ知識を「コーディネートする能力」が重要になると考えています。
 人文科学・社会科学・自然科学の各研究分野では、これまで細分化された専門分野で充実した研究がなされてきました。しかし、そうした傾向は研究を深化させることができる反面、専門的すぎる知識が互いにどのような意味を持つのかが分かりにくくなってしまう、というジレンマも抱えています。岩手大学では、このように細分化した知識の探求に留まらず、各分野の知識を総合的に融合し、新たな視点を獲得できる人材を育てようという機運があります。わたし自身の研究課題とも関わることですが、専門性を深化しつつ、他の専門分野との化学反応を楽しむという姿勢が大切になります。
 岩手大学の人文社会科学部が導入している主副専攻制などが、そうした姿勢を象徴していますね。文系・理系にとらわれることなく、さまざまな授業に参加することで、自分の専門にはない観点や研究手法を身につけることができるのだと思います。
 もっとも、本来の立脚点を見失ってしまっては本末転倒です。専門性を失ってしまえば、どの分野でも勝負になりません。専門的な能力、例えばドイツ文学の研究手法やドイツ語のコミュニケーション能力などを身につけた上で分野横断的な思考を訓練することで、柔軟で力強い、応用の利く能力を身につけることができると考えます。

先生の専門分野について教えてください。また、その分野に興味を持たれたきっかけは何ですか


ドイツ語教育の方法の一つとして、スマートフォンや携帯電話、タブレット等のためのソフトウエアを開発しました。現在、その学習効果の分析を行っています

 専門分野はドイツ語圏の文学研究です。そこから派生して、異文化間での昔話の伝播に関する比較文学研究なども行っています。また、スマートフォンや携帯電話、コンピュータなどで動作するドイツ語学習ソフトウエアの開発と学習効果分析も試みています。
 わたしがドイツ文学に興味を持ったきっかけは、子どもの頃に読んだドイツ人作家の児童文学です。大学に進学した当時は心理学や文化人類学にも興味を持っていたのですが、専攻分野を決定するところで最終的に文学、特にドイツ語圏の文学を選びました。それは、子どもの頃に読んだ本の作者がドイツ人だったことや、日本とはまるで違うドイツの学校制度にも関心があったことがきっかけになったと言えると思います。
 多くの学生が興味を抱くメルヒェンに関する研究も、ドイツ語圏の児童文学研究を進める中で出会ったテーマです。最近では、グリム兄弟が収集したメルヒェンが日本へ伝播する過程を追ったり、そのモチーフの再生産について考えています。従来は別の研究分野と見なされていたヨーロッパ文学と日本文学の間で地域性を越えて考察するという手法も、先ほど申し上げた知識の「総合化」や「コーディネート能力」の一例と言うことができるでしょう。わたし自身の研究も、人文社会科学部の理念に触発されていることになりますね。
 ソフトウエアの開発については、わたし自身、プログラミングに親和性があり、まだ誰もそのようなプロジェクトを試みていなかったので、思い切って書いてみたということが研究の契機になっています。