人文社会科学部研究室探訪●Part7(vol.2)page2

准教授 川村 和宏001
准教授 川村 和宏002
准教授 川村 和宏003

Profile
KAWAMURA Kazuhiro
茨城大学人文科学研究科【修士(学術)】(2001年)、東北大学文学研究科【博士(文学)】(2010年)


研究ではどのようなことに取り組まれていますか

 いくつかの課題に同時に取り組んでいますが、ドイツ文学研究については文献調査に基づいた研究を行っています。例えば、日本でもよく知られるドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデの遺稿などを調査し、作品成立過程について跡づける方法、いわゆる文献学的研究を行っています。その延長線上で文学とドイツ語圏の経済思想との関わりを探るといった学際的な研究も行っています。その際、ドイツ文学の古典的作品やメルヒェンにも言及しますが、やはり自分の立脚点としてドイツ文学研究の訓練をしっかりとしていたことが、研究の説得力を増してくれていると感じています。
 メルヒェンとの関連で、グリム童話が異文化、特に日本へ伝播する過程に着目した研究も進めており、グリム童話が東北地方で土着の民話として伝えられている現象などを扱っています。初めから比較文学や学際的な研究を目指したわけではなく、「ドイツ語圏の文学」という枠組みを手がかりとして探求する中で、自然に興味が広がった形ですね。
 結局、今でも子どもの頃に読んだ作家ミヒャエル・エンデの研究を続けているわけですが、世界中でほんの数人しか読んだことのないエンデの未公刊書簡を読んで、新たな発見があったときなどは楽しさを感じます。

学生の理解を深めるため、講義ではどういった点に気を配りながら進められていますか


授業で多読指導を試みていますが、ドイツ語の場合ほとんど実績がありません。そこで、絵本や児童書などさまざまな作品を収集し、多読の効果がどの程度出るのかを調べています


半期の授業で15万語を目標にしていますから、3年間続ければ50万語程度。簡単な本なら、辞書がなくても読めるようになりますよ

 外国語の授業は、主に3種類に分けられます。1年次から始める未修外国語の授業、2年次から参加できる講義、3年次以上向けに開講されている演習科目です。
 1年次の未修外国語の授業は、学生の皆さんの反応を見ながら進めていきます。丁寧に発音を練習し、シャドーイングなども取り入れながら会話やパートナー練習を行います。文法の基礎もしっかり身につけておかないと、その後の研究ができませんね。
 独特の試みとしては、スマートフォンや携帯電話、タブレット、コンピュータで動作するドイツ語学習ソフトを開発し、授業で活用していることが挙げられます。昨年作成した教科書の内容とソフトを連携させたり、ヒント機能をつけたりと工夫しているので、通学途中の電車内やバス内、授業の合間などの空き時間に暇つぶし感覚で勉強してもらえれば嬉しいですね。
 講義では、多くの学生が興味を持つようなテーマから始めて、専門的な内容へとつなげるよう心がけています。具体的には、メルヒェンやドイツ語圏の児童文学史といった親しみやすいテーマから、文学と社会や経済の問題との関わりなどといった発展的な内容までを扱っています。
 演習になると、ドイツ語のテキストに本格的に取り組むことになります。この段階まで来るとそれなりの語学力が求められるのですが、一人一人のテーマが発見できるよう、丁寧な指導を心がけています。
 その他にも、新たな取り組みとしてドイツ語による多読の授業なども試みていますので、授業を覗いてみてほしいと思います。

今後、社会に出て行く学生に対し期待されることは

 柔軟な対応力と論理的思考を身につけ、自分の強みを意識して暮らしてほしいと思います。
 学生たちが社会で活躍するこの先の時代には、もしかすると今よりもっと厳しい状況が待っているかもしれません。少子化が進む限り競争が激化するという、若者にとって過酷な事態も予想されます。ただ、そうした中でも自信を喪失してはいけません。わたし自身、いわゆるロスジェネ世代ですが、思うに任せない状況にあっても努力という点で欠けるところがなければ、胸を張って暮らしてもらいたいと思います。
 その上で自らを取り巻く環境が目まぐるしく変化したとしても、事態に対し柔軟に対応する心構えが必要になります。その際、頼りになるのはやはり論理的な思考力。状況を正確に把握し、論理的な思考に基づいて行動するための基礎を大学で訓練しておくことが大切です。また、自分の強みを認識しておくことも重要です。自らの強みが十分に分かっていれば、それをテコに状況を改善する可能性を得ることができるからです。そうした強みを発見、認識して、養うことも大学時代の大切な作業の一つと言えるでしょう。研究にせよ、留学やサークル活動にせよ、大学時代に自分の感性や判断力への肯定感を体験しておいてほしいと考えています。

国際文化課程を目指そうという高校生の皆さんにアドバイスをお願いします


ただ卒業論文の体裁を整えるのは簡単なこと。大切なのは、自分の興味・関心の対象を見つけ書いていく、すなわち自分自身の中にある語るべきテーマを形にしていくというプロセスなのです

 日々の生活の中で出会うものごとを「面白がる」ことです。皆さんの興味・関心が大学での研究のきっかけになります。レポートや論文の書き方、研究の方法などについては教員が指導することができますが、皆さんの興味・関心が向かう方向性や学術的な意味での感性は指導する性質のものではありません。けれども、そうした関心や感性が、皆さんならではのテーマへと導いてくれるのです。
 そして自分が意味深いと思うことができるテーマは、大学でも価値のある研究へとつながります。ですから、今は勉強や部活に精一杯取り組み、学校などの行事に参加したり、遊んだり、本を読んだり、映画を見たりと、大いに心を動かしてください。その上で大学の授業に参加して、語るべきテーマへと関心の焦点を絞っていけば、社会にとっても、自分にとっても、意味のある研究・活動にたどり着くはずです。先ほど申し上げた「強み」も、そうしたところから生まれるものだと考えています。


<学生のコメント>

○高校生のときに日本と外国の文化の違いを感じ始めて、「日本(外国)ではなぜこういう文化ができたんだろう」と、それぞれの文化が生まれた背景について知りたくなったのが、欧米言語文化コースを選んだきっかけです。
 欧米言語文化コースでは文化を学びます。日本では当たり前のことでも外国ではあまりないようなことだったり、もちろんその逆もあります。そこで驚くのはいいのですが、その国を、その文化を嫌いにならないでほしいんです。どんな文化でも好きになれ…とまでは言いませんが、受け入れられる寛容な心で勉強することが大切だと思います。
 ドイツ語は正直少し難しいですが、勉強すればするほど知識も会話も豊かになるので、勉強していてとても楽しいです。今まで3年間ドイツ文学に触れてきて、好奇心が広がったので、より興味の持てる分野を探求していきたいです。

○中学生の頃から外国文学を読んでいて、ドイツ文学の領域には興味がありました。高校時代に短期のホームステイを経験したことから、国際的なことにも関心を持つようになり、大学でより詳しく学んでみたいと思ったんです。
 川村先生は独特のオーラというか、わたしたち学生が気軽に声をかけられる雰囲気のある方なので、授業にも親しみを持ちやすく、いつも教室に行くのを楽しみにしています。大学の授業って抽象的で観念的なものが多いんですけど、川村先生の授業は高校の延長線上というか、基礎的な部分がしっかりしているので、初めての内容でもとても学びやすく感じています。
 自分にとって興味・関心がある分野の研究に本格的に携われるのは大学時代だけ。来年は4年生になりますので、大学の学びの集大成となるような卒論研究ができたらと思っています。