人文社会科学部研究室探訪●Part8(vol.3)page2

准教授 寺崎 正紀001
准教授 寺崎 正紀002
准教授 寺崎 正紀003

Profile
TERASAKI Masanori
信州大学工学部(1997年)、筑波大学理工学研究科(1999年)【修士】、筑波大学化学研究科(2002年)【博士】


先生の講義を聴く上で、学生に求められる姿勢について教えてください


一途な思いも大切ですが、それを持ちながらもあらゆる分野に挑戦していくことが成長につながります

 あまり気難しく考えず、気楽に受けてもらいたいですね。学問を楽しむ姿勢を大切にしてほしいです。それから、文献調査や実験などを通しさまざまなことを学んでいくという意味では、柔軟な考え方も必要だと思います。
 私自身、学生の時は化学を専攻していましたが、化学そのものが好きというよりは、物理や生物学、地質学、地学など、いろいろな分野に関係・関与していきたいという気持ちで学んできました。私が大学院を出る頃には化学物質と環境に関する話題が多く、興味を持ったことから現在はこの分野で活動していますが、これまで化学を基本としながらほかの分野にも好奇心を持って取り組んできました。何に対しても好奇心を持ち、前向きにチャレンジしていく姿勢がベストなのではないかと考えます。

先生はどういった研究をされているのでしょうか

 今扱っているのは生活関連の化学物質についてです。普段私たち人間が使っている医薬品や化粧品といった生活に関係する化学物質が、生態系に影響を与えているのではないかということがこれまでの調査で分かってきました。その汚染の現状や、実際どんな毒性があるのかなどに興味があり、現在私は野生動物・微生物に対し研究を行っています。こちらに来てからは回数としてはまだ少ないのですが、上流から海に向かい何カ所か川の水を採取し、問題となる化学物質が入っているかを分析しているところです。
 例えば化粧品の中には、水道水に触れるとすぐに塩素化される物質が入っているものもあります。その物質自体はそのままで人に対する影響はないのですが、塩素化されるとある種の毒性が高まるわけです。医薬品や化粧品が人に与える影響は既に調べられていますが、野生動物や微生物に与える影響は分かりませんので、これから明らかにしていければと考えています。
 こうした汚染物質に関する研究は、法規制等も関係してきますので、行政との連携も考慮しなければなりません。環境に悪影響をもたらすものであれば法規制を行い、新しく代替物質をつくるべきであるといったことを、我々研究者の立場から提案していくことも必要ですから、そういった意味でも実態を調べる意義があるといえるのではないでしょうか。

河川や海洋、土壌などを調査し化学物質の毒性評価を行っているようですが、 調査方法について教えていただいてもよろしいでしょうか。 また、そうした調査は学生も参加できるのでしょうか


複雑で奥深い環境化学の研究では、誰でも新発見できる可能性があります

 事前に生活排水が流れてくるような場所を調べ、水を汲んできたり、泥をとったり、実際そこに住んでいる魚を釣ってきたりということを行っています。採取したものを実験室で処理し、機械で分析していくという流れが基本です。大したことではないのですが、積極的に手足を動かすことを大切にしています。どの場所を調べたら問題と関係する物質が見つかるかといったことは、よく観察しないと養えない部分ですので、現場に足を運びながら絶えず感覚を磨いていきたいですね。
 もちろんそれだけでなく、環境資料を使った調査や新たな化学物質を合成するということも面白いテーマだと考えています。市販されていない新しい物質を発見する可能性もあるわけですから、学生たちには積極的に自分のやりたいことを追求していってほしいですね。私と河川を調査することもできますし、希望があれば新しい挑戦もできます。誰でも教科書にはない新発見ができるチャンスがあるため、ぜひここでさまざまな経験をしてください。

研究を通して実現したいことや、今後の展望などをお聞かせください


環境化学の研究者として、自然と経済との妥協点も探っていきたい

 生活に密着した化学物質の調査については、これからも続けていきたいと考えています。本当に有害なのか、害があるとすればそれはどの程度かといったことを、研究を通して見極めていきたいです。
 豊かな自然と経済、その両者の折り合う地点を判定できる仕組みや材料を提供していきたいという考えで研究を進めており、たとえ環境にとって有害とされる化学物質があったとしても、人間の生活にどうしても必要なものであれば、より影響の低い代替物を示していくのが私の役割の一つであると思っています。豊かな自然を求めすぎるのも経済としては負担ですので、臨機応変にバランス良く判断していければと。
 それから先ほども話しましたが、学生たちには環境化学の奥深さを伝えていきたいですね。この分野は複雑で、まだ解明されていない部分も多くありますので、必ず新発見が埋もれています。
 学生の中にはよく「私は理数系の話が苦手で」と言う方もいますが、環境科学の分野で有効なのは、必ずしも化学的なアプローチだけではありません。文献の調査・日常生活の調査というようなことも必要で、例えば夏場に日焼け止めを塗る人が増えたとか、どういった人が塗るのかといった社会行動や習慣も、よく精査すれば重要なヒントが隠されていることが分かります。従って、いろいろな分野の視点を持つことが大切であるといえますから、どのアプローチからも新しい発見があるのだといったことを、今後も学生に教えていきたいと考えています。