研究室探訪山本 昭彦

山本 昭彦

YAMAMOTO Akihiko

人間文化課程 【人文科学】

  • 国際基督教大学教養学部人文科学科 (1981年)
  • パリ第8大学博士課程フランス文学・比較文学科、フランス文学・比較文学コース (1984年)
  • 国際基督教大学比較文化研究科比較文学【文学修士】 (1987年)
  • この記事は2010年に掲載された記事を再掲載したものであり、改組前の学部の内容が含まれています。
  • 下記の「国際文化課程」は現在「人間文化課程」となり、山本教授は主に「現代文化専修プログラム」を担当しています。

掲載日


専門分野について

文化システムコースが対象とする分野は大変幅広い印象がありますが、どのようにイメージするとよいのでしょうか

 国際文化課程の3コースのうち、アジア文化コースと欧米言語文化コースは名前を聞くだけでもイメージがつかめると思います。それに対し文化システムコースは少しわかりにくいかもしれませんね。
 設立の意図としては「場所」や「地域」の制約にとらわれず、自在に移動するような文化も扱うことが考えられています。例えば、現代におけるオタク文化やコスプレ文化を取りあげるとき、もの自体と共にどんな時代背景を持つかといった面も対象として調査するということです。よく知られるところではエスニシティ論やジェンダー論といった、現代文化のさまざまな側面について取り組んでいる先生もいます。学生もヨーロッパの文化に興味を持ちながら、文化システムコースで学ぶ人がいたり垣根を高く設けないようにしています。学生としては、絞りきれずに、とまどってしまう人もいるようですが(笑い)。

文化システムコースの面白さはどこにあると思われますか

 例えば文学を研究する場合、時代背景を調べると同時に、作中に絵画などが出てくれば、実際にその絵がどんなものなのか探し、見て考えるということを行います。貴族社会を連綿と描いたプルーストなどでは、サロンを舞台に頻繁に絵の話が出てきたり画家が出てきたりします。その画家はどういう絵が好きだったのか画集やネットで探し収蔵されている美術館を調べることで、現実の世の中に存在するということが実感として捉えられます。文学の授業でありながら、絵の話ばかりしていたり、ずっと写真を探したりするわけです。こうした授業はこの専攻でこそ経験できることですから、初めての学生には新鮮かもしれませんね。

 実際に昔の作者もいろんな事を考え感じ、同時代の小説を読み感銘を受けたりして作品を作り上げていたわけです。文学、絵画、音楽とジャンル分けを決めつけず、それぞれを横断するような文化研究をやりたいと思っています。

先生が研究対象とされているボードレールや芸術批評について教えてください

 ボードレールは詩人として知られていますが、絵の批評もやっていた人なんですね。彼は画家としてテクニックがあるわけでもなく、特殊な技量をもってるわけでもなく、ある意味絵については素人です。にもかかわらず、画家の特徴や表現したい点を捉えたり、その内面にある、表面だけでは表しきれないものまで文章で記しているんですね。また、批評家についても、点数や甲乙をつけて偉そうに裁定を下すようなものは本当の批評では無い、ということを言っています。作品や作者について深く知り、その中身を見いだす。あるいは興味を喚起する助けになるような文章を書くのが批評である、ということを言っています。多くの人が世の中の事を数値にできることばかりもてはやし、自分自身で見ることをしないということも書いてるんです。最初にそうした言葉を読んだとき、ショックを受けるとともに大きな面白みを感じました。ボードレール=詩人という見方、あるいは当時の社会からは猥褻とみなされた詩を書いて発禁になった詩人であるという認識と共に全く異なる別の面を持ってたというのが僕にとって面白かった。150年くらい前のものだけど、現代においても当てはまる点が多くあると思います。

宮沢賢治についても、イーハトーブセンターでの活動を行われておられますね。もともと研究をされていたのでしょうか

 もともと好きではありましたが、研究対象としては難しいなという気持ちでした。しかし岩手に来てみると、いたる所にやはり賢治の雰囲気が存在するし、学生だってボードレールより賢治の方がとっつきが良いんですね。そこであらためて研究し論文も書きました。宮沢賢治イーハトーブセンターとは花巻に本拠地がある全国組織の学会です。会員が23,000人全国にいて、宮沢賢治のファンクラブ的な面もあります。セミナーなどもやっており、ある年には宮沢賢治と建築学というテーマがありました。作中に登場する建築を取りあげたのですが賢治作品のなかには病院がよく出て来ます。病院建築ってちょっと特殊だったり面白かったりするんですね。調べると宮沢家は遡ると大工さんの家系で、宮大工のようなことや、花巻市の大きな公共的な建物なども手がけている。親族にそういったものに関わる人がいた中で、賢治がどんな影響を受けたかといった発表もありました。

講義について

授業を持たれている表象文化論について教えてください

 表象文化は、形を成している文化であればどんなものも対象にできる面があります。割と最近になって、いくつかの大学で学べるようになったもので、厳密な定義があるわけではありません。人間が持つ感情として、気持ちや欲望といった、なかなか形にできないものがありますよね。人はそういうものを映画で表現したり、絵画や文学で表現するとか、何かの形にして表現します。学生にはそうした何らかの形になった表現の研究が表象文化論である、と話していますが幅が広すぎてなかなか難しいですね。

高校生へのメッセージ

 岩手大学は人社も工学部、農学部、教育学部も皆同じスペースにキャンパスがあります。他学部の学生と机を並べ、さまざまな背景と考えを持つ人と出会う機会も多いと思います。教室の授業も大切ですが、それ以外でキャンパスの長所を生かせる一番の方法は、人と話すことであり、これまで知らなかった世界に触れることです。可能な限り多くの人と接し、意見をぶつける機会を積極的に活かして欲しいと思います。


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