原田恵子
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特別研究テーマ
>ブナ林における落葉落枝の動態
目的 |
ブナ林のように温帯の森林を構成する樹木は毎年、新しく葉を開き、葉による光合成産物を用い、肥大成長と伸長成長を同時に行なっている。しかし、葉には寿命があり、不要となった葉は脱落し、枝も大風などで落下する。これらの脱落する葉や枝の量を森林の落葉落枝(ここではリター)量として測定することによって、森林の生産力や一年間に見られる生活史の一端(たとえば、開花や種子散布、落葉の時期)を量的な面から知ることが可能となる。さらに、一年間のリター量を測定するだけでなく、経年のリター量を測定することによって森林の長期的変化(生長量や気象の違い)も明らかにすることができる。 |
調査地と調査方法 |
岩手、秋田、宮城の三県にまたがる栗駒山南東部斜面の海抜870m地点に100m×60mの調査地を設定した。そこに、リタートラップ(受け口の面積0.5m)を均等になるように105個(調査地の8.79%を占める)設置し、1995年5月18日〜11月4日と1996年10月20日〜11月2日の期間、一ヶ月毎に回収した。(1995年6月〜11月と1996年11月)ただし、秋季はリター量が多いため、二週間毎に回収した。回収したリターは樹種別、枝の直径別、虫・糞、種子などに分類した後、85℃で乾燥し、重量を測定した。 なお、調査地の森林の構造を理解するために樹冠投影図も作成した。 |
結果及び考察 |
(1)森林の構造 調査地には林冠を構成する樹木は281本あり、うち118本がブナで、ウワミズザクラ、ハウチワカエデ、コシアブラの本数が多かった。また、胸高直径から幹の断面積を求めたところ、ブナ、ミズナラ、ホオノキの順に大きかった。これにより、ブナが優占するブナ林でも様々な樹種から成立していることが分かる。 (2)落葉落枝の季節変化 風も大枝の落下などの影響によって、全ての落葉落枝を回収することが不可能な場合もあったので、比較する際にトラップの数を105個になるように調整した。その結果、総リター量は213.4g/mであった。 樹種別(全27種)に見た年間のリター量はブナが一番多く(67.38%)、ミズナラ(5.53%)、ハウチワカエデ(3.32%)、ホオノキ(2.48%)、ウワミズザクラ(1.74%)がそれに続いて多かった。これらは前述の樹冠投影図から本数の多いもの、あるいは幹が太いものであった。 次に樹種による季節変化を比較すると、ヒメモチを除く樹種は11月に落葉量が最大となった。これはヒメモチは常緑樹であり、ほかは落葉樹であるためで、多くの葉は大風によってではなく寿命によって落下したと考えられる。また、花は6月、果実や種子は10月に最も多く落下した。虫・糞は6月が最大であった。これは、春から夏にかけて葉の展開に同調するように、虫の活動が活発であったためと考えられる。 (3)落葉落枝の経年変化 経年変化については11月回収のブナ落葉量を比較したところ、1995年は93.39g/m、1996年は108.44g/mとなり、1996年は1995年の1.15倍となった。 |