- 国際化の時代には、もちろん諸外国・諸民族の言語や文化を学ぶことは大切です。でも実際に海外に旅行したり、来日している外国人と話をしてみて経験することなのですが、相手からよく尋ねられるのはむしろ日本の文化や習慣についてです。
- 私は、本当の意味の国際人とは、自国の文化、言語・思想・感性・歴史などについての良質の情報を提供できる人だと考えています。そうすることで、より深いレベルでの国際交流ができるのではないでしょうか。そのためには日本の文化について国際的な視野から学んでいくことが大切だと思います。
- ひとくちに思想や感性といっても、意外と幅が広いものです。著名な思想家の思想・感性があれば、無名の人々の思想・感性もある。言語化され体系化された思想があれば、生活に融けこんでいる思想・感性もある。時代から「卓越」していると見なされた思想・感性があれば、その時代の多数の人々が抱いていた思想・感性もある。資料についても、文献(文学も含む)が主なものではありますが、そのほか図画・石碑・筆跡・音楽などにも思想・感性を見いだすことができる。
- 私たちは、ある時代に生きた人々が何を問題にし、それをどのように解決しようとしたのかを探ってみるのもよいでしょう。古今東西を問わず人間が抱いてきた問題をぶつけてみるのもよいでしょう。たとえば、神や仏などの超越者の存在、死後の世界や霊魂などをどう感じ捉えてきたか、人間よりよく生きるためにどうすべきだと考えてきたか、己が属している民族・地域・国を世界のなかでどう位置づけてきたかなど。
- 日本思想史は歴史学のひとつでもあります。歴史学は、現代に埋没し、ややもすれば目の前の実益にとらわれるあまり、時代や自分を見失いがちな私たちに対して、豊かな世界と広い視野をもたらしてくれるものと思います。同時に、自分が今生きている時代を、そして自分自身を問い直す機会を与えてくれるものと思います。
- 現在、日本思想史を専門領域として学んでいる学生たちは、それぞれ自分の関心にもとづいて、さまざまな時代の思想に取り組んでいます。
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