5.まとめ−二次的自然環境と人間活動の関係
  地域の自然環境,特に生物的自然を評価する際,従来の環境アセスメントでは貴重種や高い自然度を持った植生の有無によって判断される傾向が強い。それによると人工的なスギ植林や二次的なコナラ林などからなる丘陵地では自然性が低く,特色のない地域という結論がなされる場合が多い。このような結果が導き出される背景には「人間活動=生物の生育・生息地の破壊」という単純な図式があり,絶対的で均質性を持った「原生的環境」を対極において議論がなされている。しかし,今回の結果から丘陵地においても地域種数は多く,また,スギ植林でも出現種数は最大で,低常在度の種数が極めて多い。このような原因はスギを植栽する場所が種数の多い沢筋であることもあるが,人間活動によって立地環境が複雑になり,新たな立地に植物が侵入したともいえる。人間活動を生物の生育・生息地の破壊と断定するのではなく,多様な生活環境を創出していると捉えれば,二次的自然環境と人間活動は両立することができる。ただ注意しなければならないことは,人間活動が生物の多様性を高める方向にあればよいが,自然環境の均質化による多様性の低下を招くようでは論外である。

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