2.地域の種多様性 |
今回の資料分析に用いた調査地域( 表1)は,面積が最小8ha(御嶽山県自然環境保全地域)から最大40000ha(県立公園船形連峰)まででばらつきがあり,様々な空間レベルを網羅している。各地域で生育が確認された出現種数は284種(御嶽山県自然環境保全地域)から1107種(丸森町:阿武隈渓谷県自然公園(仮称)予定地)までで,平均662.2種であった。これらを合計すると25地域全体の総種数は2340種となり,これまでに宮城県から報告された種数の94.9%に当たり,宮城県のフロラ・データベースとしての有効性は高いといえる。 |
(1)マクロ・レベルでの種多様性 |
同一群落における面積と出現種数の関係は,一般に面積が増加するにしたがい種数は増加するが,ある程度増加すると平衡状態に達することが知られている。今回の調査地域での面積と種数の関係は同一群落の場合と同様で,面積の増加につれ出現種数は増加し,あるところで平衡状態に達した(図2)。この場合の平衡状態に達する面積は5000ha前後で,その種数は900種前後であった。この数値は宮城県におけるフロラ的景観レベル(あるいは上位の生態系レベル)の最大単位として捉えることが可能といえる。
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(2)都市化と帰化植物・植栽植物 |
地域毎に出現した在来植物は275〜1014種で,全地域の在来種数は2106種,出現総植物に対する割合は90.0%であった( 表1)。残りは帰化植物(118種)と植栽植物(116種)で,帰化率(最大:仙台湾海浜県自然環境保全地域の8.4%)と植栽率(最大値:県民の森緑地環境保全地域)は仙台市近郊の都市域に接する地域(前述した地域と東北大学理学部附属植物園,県立自然公園松島など)で高く,人為的影響を受けている状況がフロラ的に示唆される。 |
(3)地域種と種多様性 |
今回使用した調査報告書のフロラ・データを種毎に取りまとめることによって,その種が普通種であるのか,稀な種であるのかを判断することができる。ここでは種の出現頻度を20%ごとに区切った常在度(最大をX,最小をT)の割合を図3に示す。
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地域毎の常在度の割合は,面積が増加するにつれ常在度T(0.4〜28.8%:平均16.3%)が増加し,常在度X(18.3〜59.2%:平均28.5%)が減少する傾向にあった。一方,全地域(25カ所をひとつにまとめたもの)での常在度Tの割合は57.2%に対して,常在度Xは9.2%と小さく,常在度Tの存在が全地域の生物多様性を高める要因となっている。これは地域毎にみられる特性は小さいが,全体の特性は個別の特性を合算することによって決定されるためで,その値は必然的に高くなる。つまり,地域に固有な種(たとえば,常在度Tに属する種)の存在を認識することによって,地域の種多様性を表す一つの尺度となる。ここでは出現頻度が1回の種を「地域種」と呼ぶことにする。 |