4.地域の生物多様性への指標
  一般にいわれているようにある地域に生活する生物(ここでは植物)を評価するに当たり,貴重種の有無はそれなりの根拠に基づくのであれば検討の価値は高い。しかし,これまで述べてきたように,ある地域の生物多様性を考える上で,貴重種という判断基準は次元が異なっている。また,そこに生活する生物の種数が多いという結果が調査で得られたとしても,ほかの地域に普通にみられる種で占められている場合には,その地域の地域性は低く,マクロ・スケールでの生物多様性に寄与する程度は低いといわざるおえない。つまり,ここで提示した地域種数は,地域の生物多様性にどの程度寄与しているかを表現する一つの尺度となっている。したがって,地域種には貴重種や稀産種とは異なるごく普通な種も多種含まれている。普通種といえども自然環境(地形や植生を含む景観を意味する)を示す指標性があり,地域の生物多様性の相対的評価を与えるだけの十分な存在理由を持ち合わせている。
  このように丘陵地の生物(種)多様性を考える上では,貴重種の提示に加え,その地域に必ず出現する地域種をも考慮に入れる必要があるといえよう。

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