学部長挨拶
わが人文社会科学部は1977年に、それまでの教養部を改組し、「専門深化」と「総合化」を学部の教育理念に据えたユニークな学部として創立されました。それ以来本学部は一貫して、「深く学ぶ」ことと「広く学ぶ」ことの両立を目指してきました。
本学部では、その教育理念を実現するために、人文科学・社会科学はもちろん、自然科学までも含む広範囲にわたる科目を用意しています。そして、「人間文化課程」と「地域政策課程」の2課程制の下に「主・副専修プログラム制」を設けるとともに、「総合化」の結び目となる必修科目=「総合科学論」を配置しています。
本学部に入学した学生の皆さんは、自分の専門分野を系統的に、深く学ぶとともに、幅広い学問分野に触れ、広く学んでいくことになります。そうすることで、人間・文化・社会・環境に関する専門的な知識、能力と合わせて、現代社会の諸課題を多面的・総合的な観点から把握し、考察する能力を身につけ、地域社会、さらには国際社会に実践を通して貢献できる人間として成長していくことができるはずです。
皆さんが飛び込んだ学問の世界は、その名の通り、「学ぶ」ことと「問う」ことの繰り返しです。近年では高校までの学びも、また入試の多様化に合わせて受験勉強で問われる中身も随分と様変わりしていますが、とりわけ大学では、出来合いの正解を求めること以上に、自ら問うという姿勢がとても大切で、その点が従来の受験勉強に象徴される所謂お勉強の世界との大きな違いです。
皆さんは新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、日々の生活が一変する何年かをその身をもって経験しました。そして日々SNSやAIが普及、発展を続ける中、岩手大学で学んでいます。これまでの常識が音を立てて崩れていく中、自ら問いを発することがますます重要になってきます。問いがあるから、その問いに答えるために学ぶ、しかし学べば学ぶほど、新たな問いが生まれる、だからまた学ぶ、時に広く、時に深く。そもそもあることを深く学ぶには、広い視野を持ち、周囲の様々な事柄との関連の中で総合的に捉えることが必要であると私たちは考えています。問うことと学ぶこと。この繰り返しが必ず皆さんを成長させ、地域で、また世界で様々な課題解決に取り組むことを可能にしてくれるでしょう。
幸い本学部には、人文科学・社会科学を中心に、広範囲にわたる学問のプロ、教員が揃っています。皆さん学生の自由な問いかけを広く受け止め、深く探求する。一方的に教える、教えられるという関係ではなく、ともに学ぶ。学生は教員から学び、教員もまた学生から学ぶ。人文社会科学部は、そんな学びの場を目指しています。全ては問いかけから始まります。自らの学びのために、多彩な学問のプロ、教員を使いこなす、使い尽くすつもりで大いに励んで下さい。一緒に頑張りましょう。
大学教育が時代の流れに対応することは必要ですが、目先の時流に振り回されては大切なものを見失います。本学部は、大学教育で最も大切なこと=「学生が、自分なりの問題意識を持ち、自分の頭で考え、的確に判断し、解決策を見出していけるようになること」を教育の根幹に置き、今日もまた学生と共に歩み続けています。
学部長 丸山 仁