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宮沢賢治いわて学センター 第15回研究会のご報告
名 称: 岩手大学人文社会科学部 宮沢賢治いわて学センター 第15回研究会
(旧・岩手大学宮澤賢治センター第120回定例研究会)
日 時: 2022(令和4)年9月28日(水)17:00~18:00
会 場: オンライン(Zoom Meetings使用)
講 師: 桑原 尚子 氏(岩手県立大学総合政策学部准教授/国際関係論)
演 題: 国際開発・国際協力からみた宮澤賢治
──「農民芸術概論綱要」から読み解く──
司 会: 木村直弘(当センター副センター長)
参会者: 44名
【発表要旨】
本発表では、宮沢賢治の「農民芸術概論綱要」を素材に、報告者が専門とする国際開発論からみた宮沢賢治について報告した。報告内容は、開かれたテキストとしての「農民芸術概論綱要」、ポスト開発論・オルタナティブ開発論との接点、ポスト開発論・オルタナティブ開発論の実践としての「一村一品運動」という順からなり、ポスト開発論・オルタナティブ開発論の実践例として報告者が携わった中央アジアのタジキスタンにおける国際協力事業を紹介した。
開かれたテキストとしての『農民芸術概論綱要』は、「近代性(モダニティ)」への対抗パラダイムという視座から読み解くことができよう。それは、現代における国際開発の文脈では、主流派の近代的開発観とは一線を画する開発の考え方を提示する内発的発展論や、開発の脱構築を図るポスト開発論とも、「近代性」への異議申し立てという点で共通する問題認識に立つ。日本の近代化=西洋化―現代の文脈で言えば「開発」―が伝統的な農村社会を解体していく過程で、まさに「開発と遭遇」した宮沢賢治は、近代性が前提とする「自然から切り離された存在」としての人間観に対して異議を申し立て、「農民芸術」という対抗パラダイムを掲げたと解釈できよう。