研究室探訪梶 さやか

梶さやか准教授

梶 さやか

Kaji Sayaka

人間文化課程 【西洋史】

  • 京都大学文学部卒業 (2000年)
  • 京都大学大学院文学研究科修士課程修了 (2002年)
  • ポーランド・ワルシャワ大学法学部研究員 (2004-07年)
  • 京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了 (2011年)

掲載日


専門分野について

先生の研究内容を教えてください

私が専門に研究しているのは、東ヨーロッパ、特にポーランドやリトアニア、ベラルーシ地域の19世紀を中心とする歴史です。ここにウクライナを加えた地域には、16世紀以来、「共和国」と呼ばれた、ポーランドとリトアニアの連合国家がありました。分権的な国で、宗教や言語、文化の点で多様な住民が住んでいましたが、18世紀の終わりに隣国によって分割されて消滅してしまいます。その後、この国の独立回復運動が起こりますが、第一次世界大戦が終わる頃には、ポーランド、リトアニア、ウクライナ、ベラルーシという別々の国として独立しようとしました。この間の約1世紀にどのような変化があったのか、何が起きたのか。これが私の研究テーマです。国家・民族の独立や分裂にかかわる問題なのでナショナリズムの研究ですが、単に政治的な側面だけでなく、文化や宗教、歴史観、教育システム、あるいは身分制度や経済状況など、様々な変化が影響し合ったテーマです。またこの地域を19世紀に統治していたロシアやオーストリア、プロイセン(のちのドイツ)もこの変化に大きな影響を及ぼしています。ですから、私の場合は特にロシアについても考察対象に入れて、一国の視点に偏らないよう、多様な側面から研究を進めています。

講義について

どういった内容の授業を行いますか

私は、岩手大学の全学部の学生さんが履修できる教養教育と人文社会科学部の専門科目で、西洋史に関する授業を担当しています。教養教育の「欧米の歴史と文化」と人文社会科学部の「西洋史講義」では、それぞれ比較的幅広く西洋の歴史を取り上げますが、政治的な事件だけでなく社会や文化の移り変わりにも目を向けてお話ししています。また、「西洋史講義」の方では自分の関心に沿ったプチ発表も履修者に行ってもらっています。同じく学部の専門科目である「西洋史特講」では、自分の専門に近い東ヨーロッパの多様な社会やナショナリズムなどについて、掘り下げてお話ししています。「西洋史講読」では履修者みんなで同じ文献を読み、わからないところを質問したり、それに答えたり、内容について議論したりして、理解を深めています。「西洋史演習」の授業では、それぞれの履修者が関心のある分野について発表し、それに対してみんなで質問したり、議論したりして、研究力を磨いています。

大学で学び、研究する西洋史の中身は、高校までの世界史から想像するよりもずっと広いです。過去の西洋社会に関することなら何でも研究対象になりえます。覚えることが大事なのではなく、自分で問題を見つけて考えることが重要です。だから、日ごろから不思議に感じたこと、疑問に思ったことを調べてみる努力、当たり前だと思うことを少し違う角度から見てみる力、つまり知的好奇心が大切だと思います。

高校生へのメッセージ

これからは、今まで以上に世界のいろいろな国や地域との様々な形での交流が欠かせなくなるはずです。直接的な移動や交流だけでなく、インターネットを通じた交流もさらに増えるでしょう。モノや情報もすぐに世界を駆け回る時代ですし、身の回りには国外から来た原料や技術で作られたモノも溢れています。そのようななかで、世界のほかの地域の歴史や文化を学ぶことは新しい世界への扉を開くきっかけになり、過去という他者を知ることは自分の当たり前を見直すきっかけにもなるでしょう。大学の教養教育として、あるいは専門的な科目として、他地域の歴史を学ぶことで、移り変わりの激しい現代社会のなかで、豊かに生きる知恵を手に入れられると思います。

世界史の授業が面白かった人も、面白くなかった人も、それでは飽き足りなかった人も、知的好奇心を大切にしつつ、大学でもう一度歴史を学んでみませんか。


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