研究室探訪朴香丹
朴香丹
PIAO XIANGDAN
地域政策課程 【環境経済学】
- 一橋大学経済学研究科・応用経済学 修士(経済学) (2013年)
- 一橋大学経済学研究科・比較経済地域開発 博士(経済学) (2018年)
専門分野について
先生の研究内容を教えてください
現代社会では自然環境は急速に悪化しており、地球温暖化、生物多様性の喪失、大気汚染などによる脅威はかつてないほど深刻になっています。人間の経済的な活動は、地球温暖化などの自然問題の主な原因であると広く信じられています。これらを踏まえて、具体的には高等教育と経済成長及び環境問題との関係を経済学の手法を用いて、どのような対策と政策が必要とされているのかを明らかにします。経済発展によって環境問題が引き起こされた背景から、環境保全と経済発展を両立した持続可能な社会を実現するための研究をしています。
研究のひとつを紹介します。地球温暖化に代表される環境問題において、人間の活動は顕著な影響を及ぼしており、迅速な対策は持続可能な社会の実現に不可欠な要素です。しかし、環境配慮型行動に関する国際的な観点からの統計的な分析は少なく、持続可能な発展のために何らかのかたちで貢献できるようにと、以下のような研究を行いました。
個人の環境配慮型行動(寄付やボランティア活動)とポジティブ及びネガティブな感情との関係を調べました。環境保全への寄付(現金・物品)またはボランティア活動に従事する人は、ポジティブな感情を経験する割合が高く、ネガティブな感情を経験する割合が低いことがわかりました。同様に、中国、インド、米国、日本など37カ国中27カ国で、環境保全に対する現金寄付とポジティブな感情との間に正の相関があることが確認されました。つまり、国際機関において環境保全プログラムを確立することで、生物多様性などの非市場的な環境保全に貢献できるのではないかとの結論が得られました。
講義について
どういった内容の授業を行いますか
実際に起こっている地球温暖化に関連する問題について、いくつかのデータを示しながら紹介し、環境と経済との関係について学びます。次に、現在の主流となっている応用経済学に基づく環境経済学の基礎的な考え方について学び、地球温暖化問題に対する経済学的アプローチの基本的な手法を理解することを目的にしています。
講義形式の授業では、知識だけでなく現実社会で取り組まれている政策などを取り上げ、理論と応用とを結び付けるよう心掛けています。そのほか、動画等の視聴覚資料も用いて、関心を持ちやすいように工夫しています。
演習科目では、主に環境経済学を扱いますが、SDGsに関連するテーマについて取り上げる場合もあります。具体的には、これらに関した興味や関心があるテーマを受講生が選び、収集した調査データを用いて、分析結果をもとに議論します。経済発展によって環境問題が引き起こされた背景から、環境保全と経済発展を両立した持続可能な社会を実現するために、根拠に基づき論じる力を身に付けることができるようにサポートしています。
高校生へのメッセージ
持続可能な社会を実現するために、高等教育はどのような役割を果たしているのでしょうか?教育水準の向上は、より環境に配慮した行動や持続可能なエネルギー消費と関連していることが明らかになっています。具体的には大卒以上の方が、リサイクル品の消費、省エネ型家庭用品の購入、節電、ゴミの分別などを行う傾向があります。さらに、教育年数が長いほど、一人あたりの世帯収入も高くなる傾向が見られ、教育がより良い経済発展に寄与していることが示されました。興味があれば、進学先・学ぶ分野を考えるきっかけに、教育と経済成長、または教育と環境保全の関係を調べることをお勧めします。